花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part6「血濡れた鍵」 【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

はぁ~…あともーちょいで卒業なのかぁ(´・ω・`)
しかも、学期末テストまであと十数日なんに詳細不明てどゆこと?((知らんがな
とんでもねぇ結果になっても私知らんからね((だから知らんがな
…ま、最後ですから尽力は致しましょうか(棒)

銀髪少年を倒し、一旦オリバー宅で保護するナシウス達。
その直後、彼らの前に現れたのは、ルーフの手で変わり果てたエビルナイトだった。

では今回も…ゆっくりしていってね
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二ノ国 magical another world

天地照光~金煌なる光の鳳凰~





「どうすれば良い……どうすればエビルを助けられる…!?」

ナシウスは、憤慨すると同時にひどく動揺していた。
そんな心情なので、思い付くことと言えば“まず大人しくさせる”ことぐらいである。
ただ…それをするのも厳しい現状だ。
いつまでも、この住宅街に通行人が来ない筈はない。
現に先程の女性は、暴走するエビルナイトに襲われかけた。
理由はそれだけでなく…。
エビルナイトであった猛獣を、住宅街を庇いながら相手取ること自体が難しいのだ。
身体能力が高い上、今は理性を失っているので、銀髪少年以上に手強い。

「ナシウス…大丈夫?」
慌てふためく彼を見てか、オリバーが心配する。
「大、丈夫……」
様子や口調からして、“大丈夫”ではなさそうだ。
「…僕も協力するよ。
何か出来ることは無い?」
また叱られるかもしれない、と思いつつ言うオリバー。
が、意外にもそれは助け舟となった。
「駄目だ、やっぱり君を巻き込む訳に…………そうか」
ナシウスの脳裏に、一つの策が浮かんだ。

この方法なら、誰の目にも付かず存分に戦える。
オリバーを多少巻き込むものの、彼に危険が及ぶことはない。

「…オリバー、一つだけ協力して欲しいんだ」
「何?」
「ちょっとの間眠っててくれ……家の中でね」
「えっ…」
「さっき反省したから、今度はちゃんと説明する。
簡単に言えば、君の“夢の中”をエビルとの戦場にするのさ。
僕には、“自分や相手を、誰かしらの夢に引き込む”力がある」

ジャボーの深層心理内に潜んでいた“心の闇”が、自我を持ち具現化した“影”。
それはかつてのナシウスだ。
影はジャボーと激戦を繰り広げ、その後に浄化され、本来は消滅する筈だった。
しかし、彼らの戦いを見守る“霊魂”が居た。
それは“母体から産まれることなく死亡した魂”で、“魂の抜け殻”と呼ばれる。
“魂の抜け殻”が、肉体を持つことを望んだためか…影の器となる道を選んだのだ。
そして影は、現在のナシウスとなる。

この“魂の抜け殻”は、何やら未知の力を秘めていた。
それこそが “自分や相手を、誰かしらの夢に引き込む”力である。
他にも、“夢”や“眠り”に関する力を持つ。

「だけど、寝ると言ってもそんなすぐには…」
「それなら問題ない」
疑問をぶつけるオリバーの眼前に、ナシウスが左の手の平をかざした。
そこから一瞬、淡い光が出たかと思えば…眠気がオリバーを襲う。
「何か…急に眠くなって……」
「これはね、“睡眠”の状態異常を起こす力さ。
ただし、今は力を抑えて眠気も浅くしてある……さ、早く寝てみな」
「う、うん…おやすみ…」
本能的に一刻も早い睡眠を求めたのか、駆け足で家に戻るオリバー。
もしナシウスが本来の効力を出せば、その場で眠りについたことだろう。



「なあ、オリバーが寝たっちゅーのどないして知るん?」
少し経って、シズクが問う。
それにも、ナシウスは丁寧に答えた。
「それも問題ない。
魔力というのは、所有者が眠る時に沈静化するんだ…心身共に安らぐからね。
この力を使うと、その変化を察知することも出来る……お、丁度寝たか」
「早っ!?」
彼の力あってか、オリバーはもう寝たらしい。
シズクもその早さに驚かされる。
「良いよ…早くて助かる。
今のエビルに理性はない、だからご丁寧に待ってもらえる訳じゃ───」

「グルアアァッ!!」

それまで体勢を低くしていたエビルナイト。
が、待ちかねたように二人の方へ飛びかかる。
「ぎゃっ!?」
「そら来た……お前との戦場はこっちだ!」
結構な迫力で、シズクが声を上げた。
隣でナシウスが右腕を突き出すと、先端の手の平から強い光が出て、この場の全員を包み込む。
「ッ…!?」
エビルナイトは動揺し、宙を飛ぶ身体を減速させる。
そして、二人へ届かぬ内に着地すると……コンクリートが芝生になった。
この現象に彼はまた戸惑い、訳が分からない様子で周りを見始める。

「アレッ、周りのモンがすっかり消えとる…!?」

光が止んでシズクが辺りを見回すと、オリバーの家が一件あるが…その周囲が全て芝生と化し、家から一本道が伸びているのが分かった。
と言っても、道はコンクリートではない。
それよりずっと柔らかい土だ。
道が真っ直ぐどこまでも伸びており、芝生も同じくどこまでも広がる。
その上には、これまた青空が広々と広がっていた。

「これが…オリバーの“夢”の中だ」
同じく辺りを見回して言うナシウス。
「ほーん、コレがなぁ……にしても、夢見んの早すぎとちゃう?
さっき寝たばっかなんやろ?」
彼に対し、シズクは再び疑問をぶつけた。
だが、これにもナシウスが関わっている。
「また説明させてもらうと…実は、オリバーの眠気を引き起こしただけじゃない。
同時に“夢を強制的に見させる”効果も付与したのさ」
「なるほど…“夢”に関しちゃ万能なんやな。
そういや、寝とる奴ならもう一人いたろ?
……あと、何で俺も連れて来るねん」
回答に対し、新たな質問をするシズク。
しかも二つに増えた。
それだけ疑問が多いということだ。
「連れてきたのは勿論、君の力を要してのことだよ。
…“もう一人”ってのはあの銀髪少年のことか」
エビルナイトの様子を見つつ、ナシウスはまた答えた。
彼がこの不可思議な状態に慣れるには、いますこし時間がかかりそうである。
だから答えても大丈夫、と判断した。
「疲労して、僕らに敵意を向けたまま寝たアイツの“夢”じゃ…安定した空間が作れるとは思えないよ。
…それに、オリバーには“今回の戦いがどんなものか”見てもらいたい。
どれほど厳しくて、過酷なものかを……」
「“百聞は一見にしかず”っちゅー訳か…。
悪かったな、こないな状況なんに聞いてばっかで」
静かに頷いた後、シズクは一言謝る。
「いや、構わないよ。
こんな体験したら疑問が浮かんで当然さ」
笑って返すと、ナシウスは再度エビルナイトに目を移した。

「さて……もう質疑応答の時間は終了だ」

「グルルル…」
「のわあぁっ!?」
見ると、エビルナイトとの距離が縮んでいる。
彼らが話す内に、じりじりと這い寄ってきたのだ。
「流石エビル…飲み込みが早いな」
「誉めとる場合か親バカッ!!
…俺も協力したるから、はよ目ぇ覚まさしたれ!」
「ああ、勿論…ただ、理性を無くしたエビルは本当に厄介だよ。
言うなれば……“制御の効かない重戦車”みたいな存在だ!」
「上手い例えしとる場合かあああっ!?」
「ガアアアァッ!!」
「“重戦車”来よったあぁ!!」
話している内に、エビルナイトが飛びかかる。
「気は進まないけど…やるしかないっ!」
決意を固め、蒼炎を放つナシウス。
それはエビルナイトの方に飛ぶが、巧みに身を逸らされ外れた。
「…!」
ナシウスは咄嗟に彼から離れようとする。
が、その攻撃はまさに一瞬であった。
「うあっ!」
眼前に迫るエビルナイトが、右腕を大きく横に振ったかと思うと…ナシウスの胸部が一文字の形に裂けた。
直後、そこから赤い液が染み出し、痛みに襲われる。
「うぐうぅ…」
思わず膝を着くナシウス。
「オイ、どないしたっ!?」
心配してか、シズクが彼に近付いた。
「うわ、えっらい切り傷やわ…」
傷口を目にしたあとに、エビルナイトを見る。
「…アレで斬られたんやな!?」
シズクの声に応じて、ナシウスはゆっくり顔を上げた。

着地したエビルナイトの右腕に、元々彼の武器である大剣の刃が見える。
ただ、普段と異なるのは…柄が無く、刃が手首辺りから直接生えている点。
そして彼が刃を引っ込めると、元の右腕に戻った。
自在に出し入れできる辺り、右腕と大剣が一体化したと言っても差し障りない。

「なるほど、飛びかかってから一瞬で斬りつける訳か…」
呟くと、右手から光を出して傷を癒やすナシウス。

“ヒール”や“ヒールオール”とは違うが、彼にも回復魔法は使える。
今使った“ 霊魂からの救い”は体力を半回復するもので、もう一つ“不死の源”という全回復できるものを持つ。

「すばしっこい上に馬鹿でかい剣振り回すとは…確かに厄介なやっちゃな……」
「見たところ普段より軽装だから、身体速度も上がったんだ……そこだけは“解放”と言えるかもしれない」
シズクが眉を潜めると、ナシウスも顔を同じくした。
「どうにかせんと、千切りにされてまうわ………せや、思い付いたで」
何か閃いたらしく、瞬時にシズクの表情が晴れる。
「ん?」
「すばしっこい奴は動き封じんのが常識やん?
オリバーなら“ヘビーウェイト”使えるんやが…お前の場合この芝生を利用するんや」
彼の言った“ヘビーウェイト”は、対象の重量を増幅させる魔法だが、ナシウスには使えない。
だから別の案を持ちかけたのだが…。

「…上から蒼炎を降らせれば、アイツの動きは制限され、更に芝生で蒼炎が燃え広がるっ!」

ナシウスが立ち上がって、右腕を天に突き上げる。
その手の平から、大振りな蒼炎の塊が打ち上がり…やがて分散して炎の雨となった。
言われぬ内に、シズクの案を察したらしい。
「うぉいっ、俺の台詞取んなやっ!
全く、察しの良さは本体と同じか!」
跳ねながら怒鳴るシズク。
「…お、俺んトコには降らせんといてな!」
が、怯えた様子で、すぐ炎雨の範囲外へ避難した。
「ッ……ギャンッ!」
流石に避けきれず、炎の雨粒を受けるエビルナイト。
苦しむ声さえ、イヌ科の動物そのものだ。
「グル…ウウゥ…」
空から大量の蒼炎が降って、地上ではその雨粒が水たまりとなり燃え広がっていく。
その上、実際の雨が湿気をもたらすように、炎雨は熱気をもたらしている。
直接攻撃せずとも、急激に彼は追い詰められていった。
「……」
炎雨を降らせた張本人、ナシウスも悲痛な面持ちである。
苦しみながら、なお敵を狩ろうとする姿は…見るだけで辛い。

ならば、一刻も早く“本当の解放”を───

「エビル、僕らは君の敵じゃない。
もう敵なんていないから、戦わなくて良いんだ」
とにかく、自分達が敵でないことを理解させよう…そう思い、まず話しかけてみる。
「グッ…ガアアアアァァ!!」
だが、通じぬ様子で飛びかかるエビルナイト。
「エビル…!」
やはり、今の彼に言葉は通じないのか。
そう考え、ナシウスは心底残念そうに…躊躇いつつ蒼炎を飛ばそうとした。
そんな時、彼を思いとどまらせる案が浮かぶ。
彼自身が、ふと突然に思いついたものである。

まだ“言葉が通じない”と決め付けるのは早い、もっと心の奥底に届くようなことを言ってはどうか…。

ナシウスが、まだ諦めないから掴めた“鍵”だ。

「……ソラッ!!」

「ッ…!!!」
彼の言葉を聞いた途端、エビルナイトは面食らった様子で着地する。
「…ウゥッ、グアァ…!」
それから、頭を抱え苦悶の声を漏らした。

エビルナイトも、昔は普通の“イマージェン”で、オリバーの“イマージェン”と同じ種類のルッチだった。
ジャボーがまだ、“ナシウス”という名の少年だった頃…彼の心から生み出される。
そのとき彼から名付けられた名が“ソラ”。
“漆黒の魔導士”となったジャボーに闇の力を注がれ、今の姿になるまでこの名で呼ばれていた。
故に、エビルナイトにとって非常に思い入れのある名である。
だからナシウスは、エビルナイトをかつての名で呼び…古い記憶を呼び覚まそうと考えた。

間違いなく自分の言葉は届いたのだ。

こう確信すると、彼は更に言葉を発する。
「ソラ…ごめんな。
君を救えず、こんな風にしてしまって……」
「…グガアアアァァッ!!」
またもエビルナイトが飛びかかって来る。
今度は“止めろ”と言うかのごとく。
だが、ナシウスは迎撃も回避もしない。
ただ静かに立ち、まっすぐエビルナイトを見据えた。
更に炎雨を止ませ、彼の牙を右肩で受ける。
「ぐっ、うああぁ…!」
「ナシウスッ!?」
牙は強く食い込み、肉を裂いて容易に骨まで達した。
それどころか、骨も噛み砕かれる勢いで…現に軋む音がするのだ。
同時に吹き出す血を見て、その状況が伝わったのだろう…シズクがナシウスに駆け寄る。
「な、何しとんねんっ…はよ攻撃せな肩持ってかれるで!!」
そう警告したが、ナシウスはそれに反し…。
「あぐぅ、あぁ…やっと…うがっ!つ、かまっ…え……」
痛みに震える両手を伸ばし、エビルナイトを強く抱きかかえた。
「ウァッ!?」
驚いた拍子で、口を離すエビルナイト。
「ガアアッ!グルアアアァァ!!」
反射で生やした右腕の刃をデタラメに振り回し、その内ナシウスの背中に打ち付け出す。
この必死の抵抗により、当然背中は切り刻まれた。

それでも、ナシウスは決して力を緩めない。

「ソイツを傷つけんためそうしとるんか!?
せやかてお前がそこまで傷付く必要もあらへんっ!
攻撃できんなら一旦霊化せぇ、物理攻撃を受けん様…」
「それじゃ…うぐっ!ああぁ…駄目なん、だっ…」
「……何が駄目やねえぇん!!?」
怒鳴るシズクの目は、僅かに潤んでいる。
心配や焦り、ナシウスを救えぬ苛立ちが混ざって形となったのだ。
彼の心情は、もちろんナシウスにも伝わる。
そして、彼に申し訳ないとも思った。
しかし止める訳にいかない。
「エビルにっ…触れられ、ない……。
ううっ…そしたら、あっ!…気持ちも、伝えられっ…なあぁ!」
腕の力が更に強まる。
「グアッ…アウゥ…!」
エビルナイトの方が疲労してきたらしい。
背中への斬撃も弱まった。
「エビルを今救えるのは…僕だけ、だから…」
そう言って、再びエビルナイトに語りかける。
「君は…僕を守ろうと…して、戦ってくれたんだ、ね。
なのに、こっちは君を守れなかった……ごめん、本っ当に…ごめんな!」
「…ウグッ、ウウゥ……」
激闘するジャボーの代わりに伝えた言葉。
ようやく聞く耳を持ったか、エビルナイトがそれに反応し…何やら苦しみ出す。

あともう少しで……。

そう確信し、ナシウスはトドメの言葉をぶつける。

「それと、ありがとう……ソラ」

「ガアアアアアアアアアァァッッ!!!」
これを最後の咆哮とし、エビルナイトはその場で倒れた。





「ん……」
うっすらと目を開けるエビルナイト。
あの首輪のせいか、ルーフに敗れて以降の記憶が非常に曖昧だ。
ただ…彼女に操られた自分を、誰かが止めてくれたということは最低限分かる。
しかし、一体それは誰で、此処はどこなのか…ジャボーはどうなったのか───

「皆が…そんなことに……」

「…!」
そんな疑問を浮かべる彼の耳に、聞き覚えのある声が流れ込む。
もしやこの声、オリバーのものだろうか。
視界も明確になってきたので、辺りを見回してみた。

自分は、ソファーと思わしき柔らかな物体に寝かされている。
声はそのすぐ側から聞こえ、二人の人間と一人の妖精が立っていた。
彼らが誰かと言えば……。
悲しげな表情のオリバー。
深刻そうに黙々と腕を組むシズク。
そして、オリバーへ真剣に何か語りかけるナシウス。
この三人である。

「…だからジャボーは自ら囮になり、ルーフを結界魔法で閉じ込めたんだ。
これ以上の被害を防ぐためにね…。
そして、結界は発動者の意識ある限り解けない。
この隙に僕が分離してからシズクを訪ね、状況を説明して…残る君を“粛清”から守ろうと、一ノ国に飛んで来たんだ」
「ジャボー…」
ナシウスの説明を聞くと、ますますオリバーが萎れた。
ルーフ襲来に関することを、説明している最中らしい。
「これが、僕がジャボーから与えられた役目だ。
ルーフを封じても油断は出来ないからね。
アイツは“ルーフの部下”の存在も想定していた。
それが当たったのは残念だけど…君が無事で、何故か寝てた少年も消えたから良しとしよう…」
こう語りつつ、ナシウスがこちらのソファーを見る。
事情はいまいち飲めないが、自分の寝ているソファーには“ルーフの部下”らしき少年が寝ていたらしい。
少年はどういう訳か消え、同じ場所に自分は寝ている、ということだろう。
「…エビル?」
状況把握をしていると、自分をナシウスが呼んだ。
起きているのがバレたか…そう思い、エビルナイトは起き上がる。

「ナシウス様…」
「エビル…!良かった、もう大丈夫そうだ…」
ナシウスが嬉しそうに笑うと、オリバーとシズクもエビルナイトを見た。
「私は一体…そして此処は……」
直接聞く方が早い、と判断したエビルナイトが彼らに訪ねる。
「此処はオリバーの実家や」
応答したのはシズクだ。
「つまり…此処が一ノ国?」
「せや…俺達がオリバーんトコ来たら、怪しい銀髪のガキがおってな、オリバーを襲ってんねん。
それを見た俺らは“ルーフの部下や”と直感してとっちめてやった。
んで、その後に何と…操られたお前が来たんや。
そらぁもう、ごっついバケモンになっとったぞ?
まるで猛獣やった…」
「それから何とか元に戻して…君の心を“診たら”酷く傷付いてたから、心も“癒やして”おいたんだよ」
シズクの言葉をナシウスが引き継ぐ。

彼には、更なる能力がある。
ジャボーが心の全体像を“見る”のに対し、彼は心の傷付き具合を“診る”のだ。
そして、傷付いた心を癒やす“ハートフルメディ”という魔法を使える。
心を癒やすと言っても、崩壊した精神を修復して理性を取り戻させ、正気にするもの。
トラウマなど、根本的にあるものを取り除くことは出来ない。
エビルナイトの場合、首輪によって強制的に理性を奪われていた。

「では…その傷はまさか…!」
「…え?」
突如目を見開くエビルナイト。
目線の先にあるのは、右肩の傷だ。
「あっ、背中は癒やしたのに此処だけ忘れてた…」
ナシウスは、慌てた様子でそこを癒やす。
「…大丈夫、操られてたんだから仕方ないさ」
苦笑してエビルナイトに言った。
しかしその彼は…。
「私は…ルーフからジャボー様を守れなかった……。
そればかりか、アヤツにみすみす操られ…アナタ方まで傷付けたのだ…!!」
無念さで震えている。
「…過ぎたことを悔やむより、次にできることを考えれば良いんじゃないかな」
今度は優しく微笑んだナシウス。
エビルナイトを励まそうと、言葉を続ける。
「“僕ら”は、君がそんな風に思ってくれるだけですごく嬉しいんだ。
今度は、“粛清”された皆を何とか助けて…ジャボーだって助けてやろうよ」
「ナシウス様……分かりました」
それが効いてか、エビルナイトの瞳に強い光が生まれた。

「私もぜひ、同行させて頂きます」

「ん、ありがとう」
満足げにナシウスが笑う。
シズクとオリバーも、にこやかな表情を浮かべていた。



「そう言えば、君の首輪が消えてるんだけど…」
その後、オリバーが気付いたことを口にする。
ふとエビルナイトを見ると 、彼の首から首輪が消えているのに気付いたのだ。
それは、あの銀髪少年のようにいつの間にか消えていた。
「おお…ホンマやん!」
シズクも、オリバーの肩に飛び乗り確認する。
当のエビルナイトも、首に触れて確認。
そんな様子を見たナシウスは、何か気付いたらしく…。

「…分かったかもしれない、首輪の外し方が」

「えっ…?」
「何やて!?」
彼の言葉で、他三人の間に緊張が走った。

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             ~END~