皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ
いやぁ…もう学年アップシーズンとは…。
良くも悪くもクラス換えにドキドキする時期でもありますが、私は固定クラスにいるので その心配はなさそうです((どーでもいい
さて、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。
闇を操れども心は闇にあらず…という感じになったジャボーさん。
彼から完全に拒絶された影は果たしてどう出るか。
では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────
二ノ国 magical another world
「ジャボー…」
「…バッサリ言い切りよった……。
せやけどよう言ったで!」
オリバーとシズクはジャボーの背を見つめ直す。
影から解放され、翼や白大蛇の消えたそれは清々としており…彼の心中を体現していた。
「エビル」
「!」
影への拘束を強めたままエビルナイトを呼ぶジャボー。
すかさずエビルナイトが彼の隣に行き、横目で顔を覗き見た。
「…辛い思いをさせて……済まなかった」
ジャボーは視線を影に固定したまま、隣の肩に右手を置く。
感情の読めない真顔だが僅かに曇りが見られ、そこから反省の気持ちが伝わってきた。
それに対する騎士の答えは…──────
「我らは人間の矛にして盾だ。
主の代わりに力を振るい、苦痛を引き受け…… その中で主と心を通わせる。
それが人の心から生まれた我らの務めと思っています」
意外な言葉にジャボーは目を丸くした。
その様子を見て微笑し、続けて話す。
「…主がこうして戻って来れたなら充分。
貴方のためなら…身を切られようと悔いはありませんとも」
言葉を噛み締め、目を細めるジャボー。
純粋無垢なその言葉に胸を締め付けられそうだ。
「良くやってくれた…後はその身を休めていろ…」
エビルナイトの傷は癒えている。
だがこれ以上の無茶はさせられない。
そう思い彼なりに労いの言葉を掛けたのだが…。
「私はもう大丈夫ですよ…今度は何の迷いもなく戦える」
その心配も無用であった。
「……ならば、今少しだけ力を貸してくれるか」
「…御意」
彼らは意を決して再び影を見る。
二人の表情には一点の曇りも見られない。
「ぁはははははっ…はひゃはははははは」
「チッ…しぶてぇ野郎だな」
影の笑い声を聞き、ジャイロが苛立ちを見せる。
「ふふ、私は“底知れぬ闇”ですよ?
人間とは別に考えて頂きたい」
影がゆっくりと顔を上げ……。
その顔を見た時、オリバー達は戦慄した。
「しかし、ナシウスが発したこの氷の棘はかなり効きましたよ。
……厳密には鮮明な“拒絶の意思表示”がですかねぇ…」
くり抜かれたように見える黒い両目は、おおよそ人間の目とは思えない。
もはや両目というより二つの穴に見える。
その中心で、赤い瞳が彼らに向かい光っていた。
「女王陛下の魔法はナシウスのそれより強大…故に当然そちらの方が深く体を傷付けられた。
だが、私が感じる“痛み”は魔法の威力に左右されない……神経“だけ”に伝わる苦痛などで怯みはしないのです。
…だからこそ……我が本体であるナシウスからの裏切り…それは耐え難いものだった……」
影が語っていくうちに、体液とも涙とも伺い知れない液体が零れだす。
ボタボタと地面に落ちるそれはどす黒い……影自身を表すかのごとく。
「自分に裏切られることがどれほど痛いか分かりますか…?
いくら閉じた心を持ち、外界から隔離しようと……防ぎようのない“痛み”なのです。
だから心など無い方が良い、と言っているのに……お前達は……… 」
言いつつ左腕の棘を強引に引き抜き、腕を上空に向けて伸ばす影。
「心をわざわざ痛めつけ、それに耐えろと?
…この世から“痛み”を無くそうとは…微塵も思わないのですね……ならば!」
腕の先から触手の波が溢れ出た。
「その体を一切動けなくなるまで痛めつけ、お前達の心を消し去ってやるだけだ! 」
触手は褶曲して影を覆っていく。
「はひゃはははは…抜かりましたねぇナシウス!?
“キメラ”の力を手放したのがお前の誤算…その力はこちらに残された!!」
「なっ…!?」
消えたと思っていた魔法“キメラ”が残る事実に驚くオリバー達。
そんな中でジャボーが言い放つ。
「私にはそんな力など必要ない。
人間と他の生物を融合させ、心を消し……生まれるモノはそれでも“人間”か? 」
彼の言葉を聞いたオリバーも、少し考えた後に言った。
「…確かに、人間が悲しんだり傷付いたりするのは心があるから……そのせいで間違った方向に進むこともある。
……でも…─────── 」
言葉を切ると同時に輝きを増す青の瞳。
「僕が……いや、“皆”がここまで進んで来れたのは心があったからだ!!」
「…せ、せやっ!心が消えたら善悪の区別も付かなくなるがな!!」
シズクは脚に力を入れて影を指差し、付け足すように怒鳴った。
「それが何ですかぁ!?」
「ぅひっ…!?」
変化した両目でオリバー達を睨みつける影。
その形相にシズクは思わず畏縮した。
「人間か否か?心から得られる利益?善悪の区別?
そんなものは全て無意味だ!!
どれも所詮…人が作り出した概念の一つに過ぎないのだから!
今ある概念など私が残さず葬るだけ……“人間”という枠組みに捕らわれて進化が成せるものかっ!!」
声と共に触手が勢いを増し、増幅したそれは影を中心に球を生成していく。
「こっちの言い分なんざ知ったこっちゃねぇ…てか」
「ええ、説き伏せるのは不可能…ならば止める術はただ一つ」
ラースが目を鋭くして杖を構えた。
「おうよ…あっちがその気なら出し惜しみは無用だぜ!」
弟の言葉を引き継ぎ、銃を構えるジャイロ。
「皆やる気みたいだね…勿論、私もだけど!」
「…私とて同じです……私もまた、こうやって妄想に打ち勝ったのですから!」
マルとレイナスも身構えた。
「これは人間を愛してこその決断だ…人間が永久の平和と幸福を望んだが故の。
私はそれに応えてみせるとも…完全無欠な、生きとし生ける者のための“理想郷”……否、人間のための“絶望郷”を築くことで!」
完全に黒い球と化した触手の塊。
影が収まっているそれの両側から極太の触手が伸びる。
触手は分岐し、絡み合い硬化しながら巨大な右腕を、左腕を、頭部を生成し…──────
「おっ…おいでなすったな!?」
若干怯みつつもジャイロは気を保つ。
変貌した影は巨大な人骨のようであった。
ただし人骨と異なる部分も多数見られる。
頭部と両肩から生えた角、鋭利な爪を持つ巨大な掌…それはどことなく魔物化したジャボーを想起させた。
あれが白骨化すれば、まさしくこの様になるだろう。
そして肝心の黒い球は胸部に引っ付き、昆虫の脚にも見える肋骨に守られていた。
「ヴゴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
「きゃっ!?」
影の咆哮が空気を激しく震わせ、治まった頃には…。
「な、何やコレはっ!?」
「景色が…変わった…!? 」
シズクとラース含む全員が戸惑う。
先程まで周囲に岩壁がそびえる崖に居たのだが、今は辺り一面が荒れ狂う紅い海と化していた。
そして驚くことに、彼らの足元さえも水面に変わっている。
「これは…大規模な幻覚だ」
「幻覚ぅ!?
……どうりで足元の水流を感じねぇと思ったぜ」
ジャイロが濡れない足元を眺め呟いた。
ジャボーがいち早く幻覚と見抜いたのは、幻覚でアルテナの兵士達を絶望へ貶めたという…彼自身の過去に基づいたために他ならない。
「…己の心情でも表したか……悪趣味だな」
「お前が言うなやっ!」
真剣な趣で言う彼へ、反射的に突っ込みを入れるシズク。
その後に驚いたように言った。
「しっかしあの骸骨といいこの幻覚といい……
でかくなったジャボーと女王が可愛く思えるわ!!」
「……可愛い…かな?」
考え込むマルを見てシズクは跳ねた。
「言葉のあやで言うてんねんっ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
「お、おう済まんかった!」
彼はオリバーの声で平静を取り戻す。
「…心を無くすなんてやっぱり間違ってる……。
絶対にそんなことはさせないっ!!」
魔物化した影との戦いが始まるのだった。
~END~