花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part5「風鎌のち狂剣」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

いやぁ、とうとう年末ですなぁ~…全く、クリスマス直後に年賀状描いたり忙しいわっ!((
そして今回の小説…何とか年内に出すことができました。゚(゚´Д`゚)゚。
奇数話は異様に投稿が遅れる法則

ジャボーが結界魔法の発動に成功し、ルーフをナナシ城へ閉じ込めた。
一方、一ノ国では“銀髪赤眼”の少年がオリバーの前に現れる。

では今回も…ゆっくりしていってね
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二ノ国 magical another world

天地照光~金煌なる光の鳳凰~





「…僕に何の用なの?」
問うオリバーの表情は固い。

彼を“救世主”と呼んだ銀髪少年は、おそらく二ノ国より来訪したのだろう。
そもそも“救世主”という呼び名は、二ノ国を救ったことに由来する。
だから二ノ国の者しか知り得ないのだ。

辺りを見回し、人影の有無を確認すると、少年は言った。
「此処の連中も居ないから、いま話してやるよ。
俺は…とある方の命令でお前を捜していた。
……“救世主を粛清せよ”という命令でな」
「……!?」
言葉を契機に、再びオリバーの目が見開かれる。
そんな様子もお構いなしに、少年は更に話す。
「その方曰く、“救世主”だけ二ノ国外に居る可能性があるからってさ……俺は一ノ国での捜索を任された。
…割と苦労したぜ?
風の噂で流れた“丸い目の少年”って特徴と、魔力感知だけが頼りだからな」
言葉から察するに、段階的にオリバーへ近付いたらしい。
強大な魔力を感じるホットロイトの町へ飛び、それの持ち主たる彼を捜し当てたのだ。
「何はともあれ、こうして会えたんだ。
とりあえず挨拶といくかぁ!?」
再び周囲を見た後、右腕を振り上げる少年。
直後に手首辺りから刃が生え…右腕を柄とする鎌と化した。

「ウラアァッ!!」

声に伴い、透明の刃が飛ぶ。
少年の武器は風の鎌である。
「うわぁ!?」
オリバーが咄嗟に避けると、それは宙に消えた。
「き、君は一体……」
脂汗を浮かべて少年を見る彼。
「ヘッ、なかなかの反射神経だ。
それ、と……お前に明かす名も情報もねぇよ!」
一方で少年は彼を嘲笑い、再び風の刃を飛ばす。
「くぅ!」
応じるように身を動かすオリバー。
「あっ!?」
しかし、運悪く足が滑った。
受け身も取れぬまま、勢いで彼は転倒する。
「っ……うぅ…」
痛みで動きが鈍り、立ち上がるのも一苦労だ。
「どうした、杖が無きゃ只のガキか?
…それとも……この町を庇ってのことか…?
ハンッ、だとしたら殊勝なこった!」
勝ち誇るように笑みを浮かべ、また右腕を挙げる少年。
それが振り下ろされ──

「タァァァアアアアアア!!!」
「ぃ嫌ああああああぁぁぁあああっ!!!!」

遥か上空より、咆哮と悲鳴…二つの声が同時に降り注いだ。
「んなっ…!?」
少年が思わず動きを止め、顔を上げると……何も見えない。
が、強大な魔力が迫るのを感じた。
「うげえぇっ!!」
次の瞬間、横腹に強烈な蹴りを食らう。
身体が飛び、激しく地面を横転。
その勢いが消えると、彼は仰向けの状態になった。



「ふぅ、ギリギリ遅刻だな」
「駄目やないかいっ!!
…大体、これが“大妖精”への扱いかいなっ!?」
「アハハ…すみません、緊急だからあーするしかなかったのさ」
地面に着地し言葉を交わす、軍服のような服や帽子を身に着けた青年と…足下の、黄色い肌に水色の服をまとう珍妙な生物。
青年はジャボーと同じ、紅い髪と青い目をしていた。
ただ、目つきはオリバーのように丸みを帯びている。
その足下に立つのは、鼻先に下げたランプが特徴的な“妖精”シズクだ。
同等に個性的な口調も、二ノ国における“妖精”特有のものであった。

「シズク……ナシウス…!?」
顔に戸惑いの色を浮かべるオリバー。
ゆっくり立ち上がる彼に、ナシウスは目を移した。
「良かった、無事だ…」
呟きつつ、今度は仰向けの銀髪少年をねめつけ…。
「……早く帰るんだ、オリバー。
コレはこっちで片付けるから」
真剣に、尚且つ冷淡に言い放つ。
「えっ…でも、何で君達が──」

「早く行け!!」

「っ…!!」
叱声の鞭に打たれ、オリバーの肩が一瞬跳ね上がる。
「……」
辛辣な表情を浮かべ、重い足取りで歩き出し、やがて自宅の方へ駆け出した。



「……やり過ぎとちゃうか自分?
ホンマにええんやな?これで」
視界から消えるまでオリバーを見届け、渋い顔をするシズク。
「…僕だって気が引けたよ。
けど、ああ言わなきゃアイツは行ってくれない。
“こちら”のことは“こちら”で解決しなきゃ…ね」
ナシウスは苦笑で答えた。
そんな顔を見て、シズクが考え込む。
「まあ…“突き放すのも愛”とか言うしな……」
それから、彼にも聞こえぬよう呟く。
「ぅん?」
「…や、何でも」
しかし、内容まで伝わないものの聞かれていた。

「お前…二ノ国の妖精だな?」

突如響く、銀髪少年の声。
「全く、“粛清”の邪魔しやがって。
しかし妙だな、この魔力……ちまっこい妖精の他に透明人間でもいるのか?」
言いつつ立ち上がり、怪訝な表情でシズクを見る。
「おいコラ!
大妖精に向かって“ちまっこい”やてぇ!?」
「お、落ち着くんだよシズク……。
……まさか、魔力で存在を気付かれるなんて…」
噛みつく勢いのシズクをなだめると、ナシウスは顔をしかめた。
「せやな、コイツの魔力感度…賢者以上かもしれん」

ナシウスは人間と似て非なる存在だ。
ジャボーの心の一部が独立した“心霊”という生き霊で、霊体と肉体両方に身体を変化できる。
今は肉体…つまり実体なのだが、この状態でも彼を見られる相手は限定される。
彼が“警戒・あるいは敵と見なした”相手にナシウスを見ることは出来ない。
……が、魔力までは隠せなかった。
この少年のように魔力感度の高い相手では、存在を知られるという点で、姿を見られているに等しい。

なお、魔力感度を平たく言えば、魔力を感じ取る力の度合いであり…魔法を扱う者は自然と身に付けていく。
その強弱は魔法の才能や熟練度に左右されるのだが…右腕に鎌を生やしたこの少年、どうにも魔法使いには見えない。
それに対し、ナシウスとシズクは若干の違和感を覚える。
「そりゃそうだ…俺の力は、賢者だの魔法使いだのと質が違うからな」
しかし、疑問は少年自らの手で消された。
「“空間に在る真実を、粛然と映すが鏡”……視覚で認識できずとも、その存在は克明に映るのさ」
「“鏡”…?」
ナシウスが、疑問を呟きに含ませる。

「“救世主”様はお家にトンズラ、お前らは俺の邪魔者……なら、やるこたぁ一つだ!」

思考の時すら与えず、風を起こす鎌。
「キタキタキタキタキターッ!?」
「やっぱりこうなるか…!」
シズクは半ばパニック気味に、ナシウスは歯を食いしばって風の刃を避ける。
「妖精はさておき、お前の動きは分かってんぜ…透明人間さんよぉっ!!」
更に、少年はナシウス目掛け風を飛ばした。
「君が扱うのは風の鎌か…。
とかく速い、鋭い……でも好都合!」
ナシウスは手のひらから蒼炎を放ち、風の刃にぶつける。

心霊とは、本体である人間の心が魔力を持って具現化したものだ。
同時にそれは、彼ら自身が魔力の塊であることを意味する。
人間は杖なくして魔法を発動できないが、心霊にそれは必要ない。

「チッ…炎かよ!」
自身が放った風を飲み、増幅してこちらへ迫る蒼炎。
少年は苦い表情でそれを避けた。
彼とすれ違った蒼炎が、やがて宙で消える。
「ここは一ノ国の人々が暮らす場所……蒼炎を飛ばす方向を考え、火力も抑えなきゃならない。
だけど風属性相手なら、少しの炎でもそれなりのダメージを与えられる」
「おぉ…属性の相性が良かったんや!
せやったら、そのままの調子でイケる筈やで。
ただ、コイツの力はまだ未知数…その辺だけ気ぃ付けとき!」
「ありがとう…流石“大妖精”!」
「こんくらいの助言、朝飯前やっ!」
シズクに笑顔を送り、再び蒼炎を飛ばすナシウス。

実を言うと、ナシウスはこのようにシズクをおだて、彼の故郷・ドートン森から連れ出した。
しかし、それはあながちお世辞でなく…彼の力を見込んでの行為。
かつて、オリバー達の“二ノ国”を救う旅を、終始小さな体で支え続けたのはシズクだ。
戦闘能力を持たずして、戦闘中の彼らに的確な助言を与え、勝利へ導いた。
旅先で行き詰まった時にも、歩みを進めるための助言をしてきた。
それは、“執行者”としてオリバー達の動向を把握し、彼らと戦った経歴のあるジャボーにも分かることだ。
そして…彼の“心霊”・ナシウスがシズクを見込んだということは、ジャボーに見込まれたことに同じである。

「ナメんじゃねぇっ!!」
蒼炎が少年に迫った時、彼は透明で薄い、“鏡”のような楕円形の物体を出現させる。
それは丁度いい盾となり、蒼炎を受け止めた。
更に蒼炎が跳ね返って、ナシウスに迫る。
「…!?」
反射的に避けようと体が動き始める…が、理性により阻まれた。

先程、自分で言ったばかりではないか。
……此処は“一ノ国の人々が暮らす場所”だ、と。

「ぐううぅぅ…!」
彼の取った行動は、あえて蒼炎を受けることだ。

自分は細心の注意を払い蒼炎を出したが、相手にそんな気遣いがあるとは限らない。
“こちら”の都合のためだけに、一ノ国の者達の“居場所”を傷付けるのは気が引けた。

幸い、彼の衣服は不燃性素材の特別製なので、身体への損傷が抑えられる。
「オイッ、大丈夫かいな!?」
「…ああ、大したことはない!
君の助言 ……やっぱり的確だったよ」
それでも、相当の熱を体感したことに変わりはない。



ナシウスと少年の戦いは、人気の無い夕暮れの住宅街で、密かに激しく繰り広げられた。
跳ね返る自らの蒼炎をあえて受け…余裕があれば“鏡”出現の直前に少年を怯ませ、順調に損傷を与えるナシウス。
そうして互いの身体が煙臭くなる頃、少年を倒すまでいま少しとなった。

勿論、彼の命を奪うつもりはない。
ある程度大人しくさせ、ついでにルーフや彼自身の情報を聞き出そうと考えていた。

「タァーッ!」

突如、少年の背後に赤い光が迫る。
「なにっ…!?」
彼が振り向くと、赤い火の玉があった。
「がああぁ!!」
しかし、これではもう遅い。
火の玉がトドメとなり、少年は背中から煙を吐き…その場で倒れる。
「うぅ…邪魔ばっかりだ……」
体力面の問題だろう、立ち上がることも出来ない様子だ。
いつの間にか、右腕の鎌も引っ込んでいる。
「今のは“ファイアボール”…ま、まさか」
「…オリバー!なぜ戻ってきたんだ!?」
シズクとナシウスの目は、火の玉が飛んできた所に釘付けだった。

「ごめん……二人を放っておくなんて、無理だったよ」

そこに立つのは、“魔導王”シャザール…レイナスの亡き父より与えられた杖“バルゼノン”を手にするオリバー。
ナシウスの言うまま帰宅したかと思えば、“バルゼノン”を自宅より持ち出し、再び戻ってきた。

彼が少年に放った“ファイアボール”は、おそらく魔法使いが最初に会得する攻撃魔法…つまり初心者向けの下位魔法である。
しかし、強大な魔力を持つ“救世主”が、“魔導王の杖”を用いて放ったなら威力は段違い。
とはいえ、今のオリバーなら上位魔法も当然使える。
それは同時に、“あえて下位魔法を使った”ことを意味するが……この理由は、彼の優しさに起因するのだろう。

「さっき僕が言ったこと、その意味を分かった上での行動かい?」
ナシウスは、先ほどではないが鋭い声と眼光を放つ。
「…意味が分かったから、こうしたんだ。
なおさら放っておけないよ」
対するオリバーが、真剣な眼差しを彼に返した。
それから、倒れた少年を見る。
「事情は分からないけど…この子も放っておけない。
とりあえず、僕の家に置いておこう」
「せやな、レイラのオバハンに預けんのも危険やし…。
せやかて此処に放置、てのもあんまりやで」
「…分かった、まずはそうしよう」
こうして、少年はオリバー宅で保護されることになった。
「……ま、絶対こうなるとは思ったわ…」
一連の流れを振り返り、シズクが呟く。
ナシウスとオリバー…二人の性格を理解してこそ出た発言だろう。

夕空が夜空となるまでの間は短い。
少年の襲撃前は橙一色だった空も、今では朱に紫の加わった、美しいグラデーションを作っている。



~オリバー宅・リビング~

「ふぅ…ガキ一人運ぶのもひと苦労や」
三人で少年を運び、オリバー宅のリビングにあるソファーに横たわらせた。
更に“最低限度の”傷を癒やすため、オリバーが回復魔法“ヒール”を少年に使う。
全回復できる“ヒールオール”でないのは、再び襲われる危険性を考えてのことだ。
「余計なことを……。
……お前らみてぇのが居るから…俺は…」
そう言いかけ、少年は寝込んでしまった。
戦いでの疲労が睡魔に変化したらしい。
「お、おいっ……アカン、グッスリしてもうてん」
彼に話しかけるも、お手上げとばかりに肩をすくめるシズク。
「今はそっとしとこう…。
それより、いったい何があったの?
君達は何で此処に来たの…?」
オリバーが、シズクとナシウスに問う。
「…実はな、オリバ──」

「それは答えられない」

答えようとするシズクの言葉を、ナシウスが冷淡に断ち切った。
「ちょっ、おま…!?」
「どうして……」
これに対し、オリバーは勿論のこと、シズクすら戸惑いを見せる。
「事情を話せば、おそらく君はこの件に介入しようとする…いや、話した時点で“無関係”じゃなくなるからだ」
ナシウスは二人に言い放った。
「それは…どういう意味なの?」
更なる疑問をぶつけるオリバー。
何も分からぬまま、こんなことを言われても疑問が深まるだけだろう。
「…巻き込みたくないんだよ。
“一ノ国”で生活を営み、“一ノ国”の人々と交わって生きている今の君を…。
“救世主”だからと安易にすがりつき、“二ノ国”での問題に介入させる…そんな真似はしたくない」
この答えを聞き、オリバーもシズクも沈黙する。

それはただ純朴な想いだった。
先刻からのオリバーに対する冷遇も、彼のことを慮ってこその行動。
ジャボーの想いが実体化し、彼の所に訪れたのだ。

このことは当のオリバーに充分伝わる。
その上で、いつしか生まれた静寂を彼は破った。
「……ありがとう、ナシウス…。
だけど、僕は知りたいんだ。
二ノ国”の皆に何があったのか…。
…それに、僕はもう“無関係”じゃないと思う」
まっすぐナシウスに向けられる、彼の瞳。
透き通るような青さに、ナシウスもやや動揺した。
「今やから俺も言わせてもらうで。
何ちゅーか自分、ちと神経質過ぎとちゃうか?
あないなことがあったし、そこにコイツを巻き込みたくないってのもよー分かる。
やけど、何があったかぐらいは教えてもええと思うんよ。
…そこまでコイツを大事に思うんなら、コイツの意志もちっとは大事にしたれ」
流れに乗って発せられた、シズクの言葉。
彼にしては珍しく、静かで真剣な口調である。
「………」
二人の考えを聞き、ナシウスが押し黙った。

“一ノ国”のオリバーを、“二ノ国”の事件に巻き込みたくないのは確か。
だからこそ、彼に危険が及ばぬよう努めた。
しかし、事情すら教えない…というのは、過保護でやや横暴だったか…。

密かに反省した後、遂に重い口を開く。
「……じゃあ、話そうか。
今回二ノ国で起きたことを──」

突如、女性の悲鳴が響いた。

「なんやっ!?」
外から聞こえた声により、これまでの流れが断たれ、彼らは慌てて玄関から飛び出す。
直後、一斉に目を見開いた。



「や、やぁっ…何コレッ、何か来てるっっ…!?」
立ち止まったまま、道路で震える一般人女性。
眼前で不可思議な現象が起きていた。
そこには何も居ない。
だが、獣の足音が女性に接近してくる。
足音だけでなく、野獣の吐息や唸り声も近付く。

つまり…女性には見えない獣がコンクリートを踏みしめ、吐息を漂わせながら彼女を狙っているのだ。

「なんや、何やねん……あのごっついバケモンはあああっ!!?」
だが、三人の目に獣の姿は映っていた。
当然、“二ノ国”から来た者だろうから、“一ノ国”の人間には見えないのだ。

獣らしく四足歩行だが、容姿は人間に近い。
髪もあり、白く荒々しい長髪だ。
だが、赤い角と白い尾が生えている辺り、やはり獣に見える。

「…助けなきゃっ!!」
「ナ、ナシウス!」
三人は女性と獣の所に駆け出した。

「こ、来ないで来ないで助けて助け…」
「ガウウゥッ!!」
「いやああぁっ!?」
とうとう、女性に獣が飛びかかる…が、横腹に蒼炎を食らい、身体も横転していった。
「ななっ、なに!?」
彼女は、思わず蒼炎が来た方を目で辿る。
そこには、ナシウスとオリバーがいた。

二ノ国”の者であるナシウスまでも見えたのは、やはり彼が特殊な存在だからだ。
二ノ国では見られる相手を選ぶが、“一ノ国”の者は無条件で姿を見られる。

「ここは僕に任せて、貴女は早く逃げて下さい」
「えっ、でも…」
「僕なら大丈夫…だから早くっ!」
「は、はいっ!」
戸惑いつつ、女性はナシウスに従って駆け出した。



「さて、此処じゃやりづらいな」
「グルウウゥ……」
起き上がり、唸ってこちらを睨む獣。
ナシウスは如何に相手取るか考えつつ、それを見た。
が、赤光りする目を見た途端に目を見開く。

「エビル!?」

「えっ!?」
「な、なな何やてええぇっっ!!!?」
彼は、この獣にエビルナイトの面影を見た。
他二人も、目を凝らして獣を見る。
言われてみれば、エビルナイトと似通った部分も見られた。
「まさか…操られてもうたんか…?」
「……おそらく…。
こういうことか……ルーフの言った“解放”ってのは…」
獣の首には、銀の首輪が光る。

ジャボーが戦う最中まで、ナシウスは彼と一体化していた。
故に、彼から分離するまでの記憶も刻まれている。

ルーフが、首輪と共にエビルナイトへ残した、“解放”という言葉。
おそらく、彼女はこうして“人間からのしがらみ”、そして“理性”からエビルナイトを“解放”したつもりだろう。
だが、主にしてみれば……。

「こんなのは…“解放”どころじゃない…。
元ある自我を強引に奪い、首輪で捕らえた……“束縛”だっ!!!」

エビルナイトをこんな獣にしたルーフ、そして彼を救えなかった自分への怒りが爆発した。
ナシウスは震えるほど拳を握り……目に熱い雫を滲ませるのだった。

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            ~END~