花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part20(最終話)「精神融裂」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

とうとうこのシリーズも最終回を迎えました…tk無事に迎えられてこの上なく嬉しいです(´;ω;`)
内容や文才はともかく…見て下さった方々のためにも、きちんと完結させるのが一番だと思いますので。

さて、この小説にh……と言いたいところですが、今回は特に問題なく閲覧出来る筈。
強いて言うなら…オリキャラや二次設定が含まれております((いwwまwwさwいwらwww

「心があるから人は“痛み”を糧にし、反省も成長も出来る生物となり得た」
そう実感した影はようやく感情を取り戻し、再びジャボーさんの心に還ったのだが…。

では最後まで…ゆっくりしていってね!!(*´∀`) ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神






「ぷぇええええええぇぇっっしょおおおおおおぃっっっ!!!」




極寒の地に佇む大氷河穴…その最奥で、青年のくしゃみと思われる奇妙な大声が響いた。

「……ううううぅっ、寒い寒い寒いっ!?
こんな所で寝ていたのか僕はぁ!!
普通なら永遠の眠りに陥ってるところだろっ!!」
ナシウスは起き上がるなり叫ぶ。

“ナシウス”……とジャボーに名付けられたこの青年は、彼の“心の闇”が具現化して誕生した。
そう、今居るナシウスはジャボーの手で生まれ変わった影である。

「…でもフワフワしたものが…背中に……?」
そう言って振り向くと、氷狼…アングレイクが不機嫌そうに彼を見ていた。
「……起こしちゃったか…ごめんな、うるさくして。
お詫びに君の体を温め……て駄目だよね」
苦笑しつつ、掌に灯した蒼炎を消す。
これで暖を取ろうと思ったのだが、アングレイクが炎を苦手とするのを思い出し却下した。


ナシウスが何故ここに居るかと言えば、それは5時間ほど前に遡る。
世界放浪の最中、大氷河穴付近の町…サムラを通りかかり、そのとき住人と思われる少年に話しかけられた。
「あ、あの…」
「…ん?」
「ナシウスさん…ですよね?」
ジャボーやレイナスには及ばないが、世界を放浪する内に彼の名も自然と知れ渡った。
「如何にも……ジャボーと共に絶賛更正中の僕がナシウスさ」
「は、はぁ…」
少年は独特な言い回しに戸惑う。

ナシウスは“心霊”という、霊体と肉体を持ち合わせた…つまり霊化も実体化も出来る生き霊だ。
ジャボーの心の一部であるためか、ココルと似通った特徴がある。
霊体時は本体のジャボーや、同じく心から生まれる魔物“イマージェン”の目にしか映らぬ存在だが、実体化しても万人に彼が見える訳ではない、ということ。
ココルも心霊だったのか定かではないが…彼女の姿も“一ノ国”では一ノ国の住人にだけ見えて、“二ノ国”では万人の目に映った。

ナシウスの場合、その肉体は“彼が心を許した者”の目に映る。
つまり…彼に警戒された者や、彼にとっての敵にナシウスは見えない。
逆に言えば、一般人は問題なく彼と接することが出来る。

「お願いがあって、近くの洞窟にいる狼のことなんですが……」
ナシウスに向け、説明に入る少年。
「“三従者”アングレイク…グレイだね?」
「はい、それで…長老や皆があの狼のことを気にかけてるようなんです」
「それなら心配いらないよ…アイツは人を無闇に襲うような犬じゃない」
サムラの住人がグレイを恐れられている…そう思ったナシウスが言ったが…。
「いえいえ、それは皆知ってるんですよ。
ハイネさんのネコ人なんとかで…。
皆が気にかけてるのはグレイが元気かどうか、です。
……ところで犬って…」
ついグレイを“犬”と言ってしまい、それを突っ込まれた彼は焦る。
「いやいや、そっ…そうだ今は狼だったなぁっ!
ま、まあそれより…つまり僕にグレイの様子を見に行って欲しいってことかい?」
「はい、洞窟は僕らが行くにはかなり大変な場所なので…それに、お父さんが遭難してる所をグレイに助けられたって」
「へぇ…人々に恐れられた氷狼が今ではサムラの住人に愛されている、と…。
分かった、彼に会って来よう。
……そういうことも兼ねて放浪してるんだし…寧ろ是非やらせて下さい」
「ありがとうございます……気をつけて!」


そういう訳でグレイに会ったナシウスは、彼と戯れる内に寒さによる眠気に襲われ……5時間近く寝てしまった。
「ありがとな…添い寝してくれて」
グレイが添い寝して、冷気から彼の身を守ってくれたらしい。
迷い込んだ者にもこうしてやるのだろう。
「クゥン…」
頭を撫でられ、嬉しそうな様子のグレイ。
おぞましい風貌に見合わぬ甘え鳴きをした。
「……やっぱり根は犬だなぁ…」
その滑稽さにナシウスが苦笑する。
「さて、5時間もあの子を待たせたからね…早急に戻らないと」
別れ際にもう一度グレイを撫で、それから大氷河穴を出た。



ナシウスは無事少年へ報告し、ナナシ城に赴く。
当然ながら少年にかなり心配をかけていたが。
「………」
彼は霊化し浮遊して帰路についた。
そしてふと、大氷河穴で見た“夢”が気掛かりとなる。

それは…“底知れぬ闇”であった頃の自分が、ジャボーの肉体への完全憑依に成功し、オリバー達と激闘を繰り広げる夢。
簡単に言えば、現実でジャボーに阻止された肉体への完全憑依…それが成功していたらどうなっていたか、と言った内容だ。

夢にしては妙に生々しく鮮明で、脳裏に強く焼き付いている。
ナシウスはその理由を考え…一つの答えを見つけた。
「“魔導王の口”……」
“魔導王の口”とは大氷河穴の別名で、あの空間にあらゆるものを吸い込み封じる強大な魔力がある…ということからそう呼ばれる。
それには“時間”も含まれ、入った者に過去の情景を見せることもあるらしい。
「僕の場合、もう一つの“未来”を見せられたか……夢にまで影響するとは恐ろしいね」
そう考えれば、あの夢が生々しく鮮明であった理由も納得がいく。
自分は夢を見たのではなく、“選ばれなかった未来の疑似体験をさせられた”のだから。

それにしても、意外で驚くことばかりだった。

彼は夢をそう振り返る。
現実では引き出せなかったオリバー達とジャボーの意志。

そして戦いの果ての、ジャボーと一体化して自我を消すという己の選択。

“自我を持って今の世界を見たい”
という思いは、ジャボーと一体化して“自分のいない間に彼は何を見たか”知ってから芽生えたもので…それが強まったのはナナシ城前でオリバー達と一戦交えてからのこと。
故に、夢での自分の選択はごく自然なものなのだが……。
「……らしくない」
過去の自分を“らしくない”というのも妙な話だが、夢の自分…影が最期に見せた笑顔はらしくないと思ったのだ。
あれだけ狂気と絶望を抱えていた自分が…最期にあんな良い笑顔を見せるとは。
あの時の自分なら、皮肉の一つでも遺しそうなものだが…。
「…あ、そっか」
考える内に、もしかしたら…という理由を見つけた。

夢のジャボーは、あえて夢の自分に冷徹な態度をとった。
その真意を読み取れなかった自分は拒絶されたと思い込み……。

「アイツがまだ自分を助ける気だったなんて、思いも寄らなかったんだね」
“閉じた心”は痛みを感じない…だが温もりには弱かった。
それで、あそこまで素直な態度になったのだろうか。
「……あぁ、それを言えばアイツも“らしくない”顔してた…」
そう言ったあと、ナシウスは笑った。


どっちにしろ、ジャボーはあんな自分を見捨てないでくれた…ということではないか。





「おっ、居たんだ」
「あぁ…お前か」
「…相変わらず素っ気ないなぁ……」

ナナシ城周辺…浄化された“死者の湖”の崖にジャボーは佇んでいた。
そこはちょうど彼が百年程前に訪れ……身投げした場所。
やはり、彼にとって思い入れのある所らしい。
「巡り巡って…まさか此処が憩いの場になるとはねぇ」
ナシウスはジャボーの隣に行き実体化した。

死者の湖は濃霧が漂う毒沼で、悪霊が訪れた者を死に誘う……いわゆる自殺の名所。
だが、今は大きくその姿を変え…青空を映す済んだ水面や、生命を育む広大な緑を持っている。

「訪れた者の心を癒やし……同時に、美しさゆえ自殺を促す場ともなった」
「…で、そんな自殺者を引き止めてるのが君か」
「それも“償い”の一つと考えたのでな。
……自ら命を絶つ、それ以外の道を示すだけだ」
ジャボーは水面を見つめて語った。
「何せ、レカ大陸北部は“ジャボーのお膝元”だったからね。
君の目も隅々まで届く訳だ…現に自殺者も激減したし」
「私の“償い”は此処だけに留まらないがな……」
そう…果たさねばならないことは、もたらしてきた災厄の数だけある。

「…なら、世界をうろうろして、君に見えない所まで解決するのが僕の役目さ」

ナシウスも当然、ジャボーの覚悟を理解しており……彼も同等に覚悟していた。
「案ずるな…独りで世界を変えるのは慣れている。
…お前はやりたいことをすれば良い」
「……“罪を背負うのは私だけで良い”って?
何言ってるんだか、これがやりたいことだよ。
文字通り僕らは“二人で一つ”だ…つまり、僕には罪を半分背負う権利がある!」
「権利だと……妙なことを言うな…」
ジャボーは、弾のごとく言葉を飛ばされ呆れる。
「…大体それを言うなら…──────────」
そう言って突如ナシウスが消え……。

「ブフォアッッ!?」
「君は出したい表情を出せば良いっ!!」

背後からジャボーをくすぐった。
完全に隙を突かれた彼は盛大に吹き出してしまう。
「…キッ…サマ……何をす…っ……」
笑いを漏らしつつ必死に抵抗するジャボー。
しかし、器用に両手を動かすナシウスは厄介だった。
「仏頂面で回りくどい言い方して…だからいつまでも“心を取り戻せ”ってヌケガラビト扱いされるのさ!」
「百年いじょっ……癖を…急っ……治せ…筈……っ」
“百年以上もの癖を急に治せる筈がない”
ジャボーはそう言ったが、酸欠となりかけ声が掠れている。
そんな彼も、ようやくナシウスの右腕を掴むと、そこに軽度の電流を流した。
「うぐっ…クソ…」
よろけて倒れ込むナシウス。

「…真剣な話をして……唐突にそれか……」
息を整えると、ジャボーは涙の滲む眼で彼を睨み付けた。
「へへんっ…流石にアレで無表情は無理だろ?
とにかくもっと力を抜きなよ。
……あんな良い顔で笑えたんだから…あの娘だってきっと………」
瞬時に痺れの取れたナシウスが言うと、ジャボーは怪訝な顔をする。
「…何の話だ?」
「……夢の中での話」
かなり拍子抜けした。
夢の中での話を現実に持ち出すとは…。

一体化すれば、彼らは互いの記憶を共有できるが…唯一、互いに見た夢だけは知ることが出来ない。
その由縁は、単にどちらの記憶にも残らないためか……あるいは、ナシウスの新たな器となった“魂の抜け殻”の悪戯か。



親友とも、親子とも、兄弟とも、双子とも、似て非なる奇妙な関係の魔導士と心霊。
だが…二ノ国はそんな彼らすら受け入れ、今日も今日とて豊かな表情を見せる。
その表情は、やはり奪うべきではないのだ…と、ナシウスは改めて実感を覚えるのだった。

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          ~ALL END~



(ここまでお目通しありがとうごさいました<(_ _)>)