花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part15「お前ではない」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

我らが冬休みも遂に終焉を迎えましたな……(´・ω・`)
…そーいやこの小説描き始めてから一年くらい経ってんのな。
よし、今年はこの小説を書き終えられるよう頑張ろう!願わくば新章突入とk(ry

さて、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。

アルテナを壊滅状態にまで追い込んだジャボーさんと、そこに現れた三騎士さん…果たしてどうなるかな!?…っと((
因みに今回は結構長め。

では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神




「我らが同胞達を……おのれ…」

銀の鎧を纏った騎士、ハインは周囲に転がる仲間達を見て呟く。
皆、血を流したまま地面に横たわっていた。
「最早許しはしない。
お前の命…此処で頂戴させてもらおうか」
黒き鎧を纏った騎士、サイベルが鞘から剣を引き抜く。
その構えは真摯な彼の性分を物語ると同時に…アルテナの実力者“三騎士”の一人だと、瞬時に察しがつく程の闘志を醸し出している。

「…命なら既に投げ捨てた!
お前達もこの者共と同じ運命を辿るがいいさっ!」

高笑いしつつジャボーは応え、サイベルの方へ振り向いた。
その隙に、白い鎧を纏い…首元までがっちりと覆うタイプの兜を被ったシングが、上官の身を抱える。
「信じられん…貴方がここまで追い詰められるなど…!」
上官にそう話しかけるものの、彼は完全に放心状態であった。

きっと他の仲間達も、あの魔導士によって…。

悔やみつつ、上官を安全圏へ置くシング。
そして彼も、サイベルやハインの元へ走った。


「命を…捨てただと……!?」
「常人ならざる魔力は薄々感じていた……
だが一体…貴様は何者だ!?」
「…さあ、お前達が知るべきことではありません」
サイベルとハインはかなり動揺する。
その実力と経験故に、動揺など殆どしない彼らだが…今回のジャボーは全く未知の相手であった。
「戦前に動じては勝機など有り得ない…どんな相手だろうと、我らは戦わねばならぬ」
聞こえていたらしく、二人と合流したシングが諭す。
「…そうだな……戦わずして相手を知ることは出来ない。国を守ることも…」
噛んで含めるように言うハイン。
そんな二人にサイベルは頷き……

「我ら騎士団……これより母国アルテナを死守する!!」

二人と共にジャボーへ向かい走った。
「ふふふ…待っていた!!」
一方ジャボーは、意図の読めない言葉を発して“無限の炎”を飛ばす。
「ぐっ…!」
その蒼炎は“ファイアボール”と比べかなり速い。
彼らは間一髪の所で、剣に吹雪を纏わせて打ち消した。

三騎士の戦法は異彩を放つ。
アルテナの戦力は二極化しており、ナシウスのいた兵士団はひたすら魔術を…三騎士の率いる騎士団はひたすら剣術を極める。
だが、彼らはその二つを融合させた。
彼らの持つ“アルテナソード”は杖の代わりにもなる代物で、且つ武器としても強力…
騎士団の中で、人知れず魔術も極めた彼らにこそ相応しいと言えるだろう。

「…流石はアルテナの三騎士。魔法への対処法も素晴らしい」
言いつつジャボーが新たに魔法を発動する。
「これにはどう対処してみせる!?」
彼が次に飛ばしたのは、黒い雷。
さながら光線のようであった。
「シングッ!」
「…ああ!」
掛け合いの後、ハインは吹雪を、シングは炎を剣に纏わせる。
そしてサイベルが強風を起こし、吹雪を別の方向へ誘導。
更にシングが吹雪に炎を重ね……
空中に水流が生まれた。僅か数秒のことである。

「……!」
ジャボーは目を見開いた。
“闇の雷撃”が突如現れた水流を伝い、水流と共に上空へ消え去ったのだ。
そして…。

「覚悟ぉ!!」
「うぐっ…!?」

風を発生させた直後、背後へ回ったサイベルの剣で……遂にその心臓を貫かれる。
「…これまでのようだな…漆黒の魔導士」
サイベルはジャボーから剣を引き抜いて言う。
「……?」
しかしそこで違和感が出る。
何故だか、初めて会ったこの男にデジャヴを感じたのだ。
そして近距離で感じるこの魔力…それは強大ながらどこか懐かしい。

「…言ったろう、命などとっくに捨てたと」
「!!!」

ジャボーの声と共に、彼は触手の波へ飲まれた。
「そんな馬鹿なっ…サイベルッ!」
「心臓は確かに貫いた筈だぞ!?」
二人は信じられない。
サイベルによって、的確に心臓を貫かれた者が生きているなど。

「ぐっ…あ…!」
全身に触手が絡みつき、身動きがとれぬサイベル。
「その鎧を貫くのは不可能でしょうね…ならば隙間から中身を貫く!」
そう言い、ジャボーは触手を鎧の隙間から侵入させた。
「うぅ…くっ…」
剣を持つ右腕を動かそうとするが、やはり動かない。

ならば責めて、先程生まれた疑問をこの男へ…。
…でなければ自分は死んでも死にきれぬ。


「お前はっ……ナシウス…か!?」


刹那、触手が緩んだ。

その僅かな隙にサイベルは触手を斬り刻む。
「サ、サイベル!?」
「何を言っている!?」
サイベルを救おうと走るハインとシングが、その足を止めた。
ジャボーもまた、一変して呆然としている。
サイベルの言葉は、瞬時に周囲の者の動きを止めたのだった。
「…その者がナシウスな筈がない。
彼は心より国を…民を想っていたんだ……最後までな!
ナシウスに…こんな真似が出来るものかっ!!」
ハインがサイベルへ叱声を飛ばす。
「我らが何のために決意を固めたか忘れたのか……
我らが国を死守してきたのは、彼を救えなかった償いもあってのこと…いつしか、彼の望む“終戦”をアルテナへもたらすためだ!」
シングも同様だ。

国を壊滅状態にした凶悪な魔導士が、平和を望む心優しい旧友と同一人物などと思える筈がなかった。
彼らにしてみれば、そんなことは考えたくもないだろう。

「決して彼の犠牲を忘れたのではない、忘れられるものか。
増してやナシウスがこんな真似をするとは思えぬ」
サイベルが二人を諭す。
「…だが、お前達も聞いただろう?
多くの魂がさ迷う“死者の湖…そこに身投げした兵士がいる、と」
「……まさか…」
「…そのまさかで、その兵士が彼だとするなら…────」
「そんな筈はない!…そんな…筈……っ」
ハインは強く否定するが…やがて、シングと同様に沈黙した。

本当は、彼が身投げしてもおかしくないと悟ったのだ。
それだけの、独りで受けるにはあまりに耐え難い仕打ちをナシウスは受けたから。

ただ信じたくなかった。

どこかでまだ、彼の生存を信じていたいだけなのだ。

「…先程お前が言った“命を投げ捨てた”という言葉……つまりは、こういうことでないのか?」
今度はジャボーに話しかけるサイベル。
ジャボーはしばらく無表情で沈黙していたが…。
「……だったら何だと仰る?」
再び笑顔を“貼り付けて”答える。
相も変わらず心情の読み取れぬ、ある意味で完璧な笑顔。
だが、サイベルはそこから必死さを感じた。
自らの動揺を隠そうと必死であるかのような……。
「ついさっきお前達が語った“ナシウス”の人格…アレは所詮、無知故に形成された過去のものだ」
ジャボーは三騎士の言葉に反論する。
「…償いに関しても同様。
それで救われるのは死者でなく自分だ。
そもそも、死者が真に望むことなど分かる筈がない……結局はエゴなんです」
それから畳みかけた。
「くくっ…しかし、そんな無能な兵士も遂にくたばったようで!」
「っ……な……」
「……そう、“ナシウス”は死んだ。
今ここに居るのは…私は“漆黒の魔導士ジャボー”!!」

ハインとシングは、かなりのショックを受け…しかしながら真実を受け入れる。
ジャボーが今語った言葉は全て、本人しか語り得ないものばかりなのだ。
「つまり今のお前は…かつてのお前と違う、と言いたい訳か」
「まさしくその通り…」
一方サイベルは、至って冷静に…実のところ他の二人と心情は同じだが、ジャボーへ問いかけた。
そして更なる問いかけをする。
「…では改めて聞こう。
お前は何故母国アルテナを襲撃し……」
だが、遂に変化を見せた彼の声色。

「何故かつての友を手にかけた!?」

落ち着き払った声は、いつの間にか叱声に。

いくらあのような仕打ちを受けたとは言え、母国を襲撃し…増してや、人を殺められるような人間ではなかった筈だ。
それどころか、兵士団の誰よりも命を重んじていたというのに……。
仲間を殺されたのは何より…こんな真似をした旧友への憤りと戸惑いがサイベルにあった。

「決まっています…今や此処も愚国となり果てた。
故にまずはその戦力を───────」
「お前ではない」
「っ…!?」

突如、サイベルはジャボーの言葉を遮る。
更に彼は踏み込んだ。
「……私はお前に答えを求めているのではない。
私の問いは…心を閉ざし、その無機質な口調や表情で自ら他者と壁を作っている今のお前に対してではなく………」
図星だったようで、ジャボーも遂に冷や汗を浮かべる。
彼の、他者に対する妙に丁寧で無機質な態度…それはまさしく、他者との無干渉を望む結果だったのだ。
そして、今度はサイベルが畳みかける。

「共に戦った我らが親友…ナシウスに対してのものだ!!」


「サイベル……」
「…………」
サイベルの言葉に胸打たれた様子のハインとシング。
「っ………」
そして…動揺を隠せずに沈黙したジャボー。
まだ彼は“戻れる”のかもしれない。
そうサイベルが確信した時であった。

「ひっ…!?」

突如響く少女の声。
声のした方を見ると、そこには立ち尽くす少女がいた。
「…外界の様子でも見に来たかっ…!」
「何をしている!早く逃げろ…早くっ!!」
シングが呼びかけるが、一般市民と思わしき少女は怯えたまま動けないようだ。
そんな少女にすら、ジャボーは容赦なく触手を飛ばす。
「止めろっ…ナシウスゥッ!!!」
「……お断りしますよ」
サイベルの制止にも彼は応じなかった。
やむを得ず、三騎士は少女のもとへ走るが…。
「ぅぎっ!?」
遂に、触手が少女の両脚を貫く。
「あっ…あぁあ……」
「周囲に背くとは悪い脚だ。
罰として二度と歩けない体にしましょうねぇ…」
再び彼は冷笑を浮かべた。
そして更に……。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁっ!!?」
くるぶしを両方貫く触手。
直後、少女は文字通り腰を抜かし、やがてすすり泣いた。
「ひぅっ…うぅぐうっ!痛いっ…痛い痛いっ、痛いよおおぉ!!
……ごめんなざいっ…うぎ…許じでぇ……」


「何と言う…ことをっ……」
シングは思わず失速してから止まり、身を震わせる。
ほんの一瞬…全速力で駆けた三騎士でも、少女を救うことは叶わず。
「…間に合わなかった……」
サイベルすら、足を止めずにはいられなかった。
少女を救えなかった罪悪感と、旧友の残虐非道な行いへのショック…それはかなりのもの。

「何を立ち尽くしているっ!?
…まだあの子は生きているんだっ!!」

ハインが二人の方を一瞬見て独走した。
彼は三騎士の内でも一際速く、二人より前へ進んでいる。
サイベルとシングは、その言葉でどうにか動き出した。
「…間に合わなくて済まなかった……今、治すからな」
間もなくして少女の前に跪くハイン。
更に剣から、優しい光を放った…“ヒール”だ。
そして患部に剣の柄を近付ける。


「自ら私に背を見せるとはねぇ!!」

声と同時に、彼と少女の頭は雷光へ埋もれた。


「っ…?」
サイベルとシングは、何が起きたか理解出来なかった。
しかし彼らは直後に理解する。

首元から煙を吐き、頭部を失った二人を見て。

先程まで動いていたその体は人形のように崩れ…庇うかのように、首なしの少女に重なる首なしのハイン。
遺された二人は硬直し、やがて身を震わせた。
「……ハイン?」
「どういうことだ…?」
呆然と呟くが、じわじわ感情と実感が込み上げる。

「…あ…あっ……」
「ハインッ…そんな!ハイイイィィイインッ!!!」

「あははひゃはははははははははははははっ!!
どうです?目の前で大切なものを奪われた気持ちは!?」
膝から崩れ落ちる二人を見て笑うジャボー。
その狂った笑い声はしばらくしてから止み、彼はハインと少女の遺体を見た。

「……私は自分を殺したのだ。
母国、仲間、民……友を殺すことなど…あまりにも容易い」

その表情と声は、一瞬で恐ろしく冷たいものへ変わる。
これこそがジャボーの本性なのか。

「……く…も…」
その時、サイベルが呟きつつ起き上がり…シングが無言でそれに続く。
その身は震えているが、先程とは異なる意味での震えだった。
故に…二人共剣を強く握り締めている。

「よくもおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!」

彼らは怒りに身を任せ、剣をジャボーへ向けて特攻した。
「…そうですよ、始めからそう来れば良いものを」
ジャボーもまた、それを迎え撃たんとする。
しかし…────────

「待てぇっ!!!」
「「「!?」」」

その声で三人は硬直した。
そして声は……ハインのものである。
「良く見ろ…俺は生きている」
見ると、ハインはほぼ無傷でこちらを見ていた。
「ハイン!?どういうことだ!?」
「確かお前は先程…!」
サイベルとシングは心底驚く。
確かに見たのだ…ハインと少女の首が消える瞬間を。
しかし彼は言った。
「おそらくそれは幻覚だ!
それに…あの子も本当は存在しない……」
ハインに言われ、少女のいた場所を見ると…少女は跡形もなく消えている。
「…そうだ、本当は誰も死んでいない。
ようやく気付けたが……お前は誰も殺していなかった。
違うか…ナシウス」
「っ……その名で呼ぶなと言って──────」
「止めてくれないか…己を偽るのは」
シングがジャボーの言葉を遮った。
そして、サイベルはゆっくり顔を上げる。

「……確かに分かった、お前の真の目的…。
やはり…お前は我らが親友だよ」

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            ~END~