花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part16「転機」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

毎年恒例とも言えるかもしれないインフルやノロウイルスの流行…様々な予防法がありますが、一番はやっぱりバランスの良い運動や食事で体力を付けることだと、個人的には思うのです。
※筆者は凄まじい運動音痴。体力もなけりゃ握力もありゃしねぇ矛盾。

はい、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。

完璧だった筈の壁を崩され動じるジャボーさん。
三騎士はそんな彼に何をもたらすか。

では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神




「私の…真の目的……?」

ジャボーはサイベルの言葉で更に追い詰められた。
正体を見破られることすら想定外だったというのに、真の目的までも…。
「お前がアルテナを襲撃したのは、単なる復讐がためではなく……我々の戦意喪失を狙うためだろう?」
一方サイベルは彼を真っ直ぐに見つめる。
これにより、一層ジャボーの精神が張り詰めた。

「…戦力となる者達へ、仲間や民が殺されゆく幻覚を見せ、更に腕や脚を負傷させて戦闘不能状態へ陥れる。
この手段で強い精神的ショックを与え……生かさず殺さずの“絶望の連鎖”を生み出した訳か」

「成る程……では、先程の少女の幻も…」
「これなら兵士も上官も…そして手駒を全て失った大臣や王も、戦うなどという気は今後一切起こさぬだろう……」
ハインとシングはサイベルの推測に納得したようだった。

圧倒的脅威と、それによりいとも容易く消える仲間の命…その幻が与えし絶望は何よりも深い。
回復魔法で身体を癒やしても、その絶望は消えないだろう。

更に語るサイベル。
「……真の絶望を知るお前だから思い付いたのだろうな。
たった一つの願い…それは今も────」
「黙れぇっ!!」
「!」

突如ジャボーは彼の言葉を遮った。
それから、うつむきつつ声を震わせる。
「…何度言えば分かる……“ナシウス”は最早どこにも居ない!
無能な弱者は強者の手で消え去るのみだ!」
明らかに様子の変わったジャボー。
それは、サイベルが彼の心に触れたことを意味していた。
「……お前達のように“痛み”を知らぬ強者が…
分かったようなことを言うな!!」
怒鳴りつつ“闇の氷結”を発動させる。

サイベルは一瞬、平手打ちされたかのような表情を浮かべたが…兜に隠れていたためジャボーにも誰にも知られなかった。

「それもまた…我らを絶望させるための言葉か?」
そしてサイベル含む三騎士は、炎を纏った剣で地面を突き刺し、氷が柱となる前に溶かす。

これより百年程先…すなわち今では一瞬にして氷の柱を突出させているが、同じ魔法でもこの時はそれ程素早く出せなかったのだ。
その上精神を乱されたことで威力が弱まり…完全に防がれてしまった。


吹雪が止むと…ジャボーは顔を上げていた。
その瞳は濡れ、頬も濡らしている。
「ようやく本質を現したな…」
サイベルが彼の表情を確かめ言った。
一方ジャボーは泣きながら呟く。

「…何故……ここまでしても…
お前達は私を見限ろうとしない…?」

「先刻ハインが死ぬ幻を見せたのはそのためか。
お前に対し本気の殺意を抱かせ、それから戦意喪失を図るつもりで……」
思い返して言うシング。
「…これ以外に思い付かない……“終戦”を実現させるための方法は…」
彼は三騎士との対話の中、遂に真意を語った。
「やはり私は無能……望みの力を得ても尚…こんな真似しか出来なかった」
「才能など関係あるものか…
我らもお前も……終戦のために尽力したのは変わらぬだろう?
…それに…どのみちこの国は滅ぶさだめだった」
「……何…?」
ハインの言葉に驚くジャボー。
「寧ろお前が来て幸運なくらいだ…
お前が追放されてから今に至るまで、増々アルテナは血を求めるようになった。
このまま国が戦争を続ければ……お前が見せた幻は現実となるだろう」
「そんな……」
そう、彼が危惧したことが起きていた。
前回行った町と同様…アルテナの人々の心も荒んできている。
上層部の者や兵士は命を軽んじ、民の間で窃盗や殺人が日常茶飯事となったのも事実だ。
「これで、我らの望みは叶う。
人々を守ることが出来たのだ…戦乱の渦、そして狂気から」
言った後で、サイベルは静かに語る。
「……だが、少しも喜べはしない。
我らの心も荒んでしまったか…お前をそこまで追い詰めたためか……」
そしてその声は震えていった。
「本来…我らにお前を正そうとする資格などない。
お前を救うことも出来ず……狂気に染まるアルテナも止められなかったのだからな…」
それからハインも続く。
「全くだ……力を欲したのは一体何のためか。
扱いを誤れば新たな争いの火種となる、それが力だと分かっていた筈だがな…」
最後にシングが言った。
「……故にお前を責めることも出来ぬ。
今日のお前の行為…辛くも、国を想っての最善策に変わりないのだから…」

「だからとて…──────」

だが、彼らは突如剣を構える。

「追い詰められた友をみすみす放っておけるか!!」

一転して覚悟を見せた三騎士。
それを映したジャボーの瞳から、更に雫が溢れる。

心が見える故に耐えきれなかった。
語らずしても、一点の曇りなく流れ込む三騎士の心。
先程まではあえて彼らの心を見なかったが、あまりにもそれは眩しく重過ぎる。

「…だから…心など見たくなかった……」
涙声で呟く彼。
しかし、気丈にも負けず…。
「私とて…最早後戻りは出来ない。
既に身も心も穢れた……ならば道は一つのみ!」
泣きつつ“イーゼラー”を発動させた。

「誰にも邪魔は……させないっ!!」

巨大な黒球は破裂し、三騎士を吹き飛ばす。
「ぐぉっ!」
「がっ…」
「っ……!」
鎧のお陰でダメージは軽減されたが、彼らは数m飛ばされ散り散りとなった。
「「「!」」」
やがて闇が消えると、ジャボーが遥か上空へ移動していた。
あれでは三騎士も手出し出来ない。

「…どうしても進むというのか……ナシウスッ!!」
ハインは彼に届くよう大声で呼びかけた。
更にこう付け足す。
「我らと…再び進むことは出来ぬのかっ!?」
すると、ジャボーは強く答えた。
「それは不可能だ。
この通り、私は最早人ですらない!
もう進むより他はないんだ…独りでな!!」
「っ……」
ハインは心底落ち込んだようで、大きくしおれる。
他の二人も深く悲しむ様子を見せた。

そんな三人の心を見て、罪悪感と悲しみに襲われ…それを強引に打ち消そうとジャボーは言い放つ。
「…もう戦わせはしない。
戦争に狂う国々の者も……お前達も!!」

その言葉から、三人は彼の真意を読み取った。

彼もまた、自分達のことを深く想っていたのだ。
冷酷非情な態度を見せ、殺意を抱かせ…そうして自分達を突き放し…全ては自分達やアルテナの人々が、これ以上戦争で傷付くのを食い止めるためである。

三騎士は兜の下でそっと涙し…サイベルは言う。
「…ならば、最後に伝えよう!」
「…?」

「お前の意志が少しも変わらぬように…昔も今も…これからも我らはお前の友だっ!!
そして友として…いつしかお前の魂が救われんことを!心底祈り続けるっ!!!」

「っ……う…」
遂にジャボーは嗚咽を漏らした。
しばらく顔を覆った後で三騎士へ言う。

「……ありが…とう……許して…くれ…!!」

言葉を遺し、とうとうアルテナを去った。



三騎士は、彼の居た上空を惜しむように眺める。
気が遠くなる程の間。

ジャボーは二度と三騎士の前に姿を現さなかった。
その後、彼らが亡霊となるまでのことを知る者はいない。





「ぐっ、うぅ…ああぁ…!」

アルテナより少し離れた平原、そこでうずくまる者が居た。
「っ……んんっ!うぐぅううっ!!」
ジャボーは草を強く握り締め、苦しみに耐える。

聖灰が、肉体と心を更に侵し出したのだ。
彼の心が著しく弱ったためである。

「あぁっ…ぐ、う、うあああぁ…」
その呻きには嗚咽と涙が混ざっていた。
様々な思いが脳内に走り…その中で彼は一つの考えに達する。


これは心の苦しみ…自らへの戒め。
心があるからこれ程までに辛いのだ。

ならば完全に心を閉ざそう……。

たとえ全人類から恨まれようと、果たさねばならないことがある。
自分には、何事にも揺らがぬ屈強な心が必要だ。
閉じた心には何も届かない…故に痛みも感じない。


そう思うと、この苦しみも少し収まる気がした。



「聖灰の侵食を…止めたですと……!?」
水晶からジャボーを観察し、オムスは驚愕する。
「…これは驚いた。己の意志で聖灰を支配したか……」
レイナスもまた、衝撃を受けた様子だ。
「つまりは…今までにない完全な“執行者”!?」
「ああ。私達が見たのは……その誕生の瞬間だ」



「もう…誰にも心を開きはしない…」

ジャボーはゆっくりと起き上がった。
一層その魔力は強まり…
“閉じた心”を象徴するかのごとく、顔は闇に覆われている。
更に心を閉ざした影響か、“読心”の力も己の意志で操れるようになった。
つまり、見たい時にのみ心を見ることが出来るのだ。

「次に好戦的な国はどこだ…」
呟いた後に考え、やがて頭にとある国が浮かぶ。
「……あそこか」
アルテナと敵対する強国…ベルダーナ。
ジャボーはゆっくりその方向を見た。



こうしてジャボーの勢いは留まることを知らず、数多の国が他国との戦争を放棄した。
更にベルダーナが壊滅した頃からか、心の一部を失った者が激増する。
やがて人々は彼らを“ヌケガラビト”と呼び始め…他国より何より“漆黒の魔導士”を恐れていった。

世界そのものを“閉じた心”に変える。
全ては平和がために─────


その世界改革は100年以上も続き……同じ間だけ“心の闇”は彼の中に巣くっていた。

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            ~END~