花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part19「熱い掌、融解する心」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

遂に筆者も受験生…勉強に力を入れるのは勿論、年齢的に自立も出来るようにしていきたいですね。

さて、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。

影は魔物化し、オリバー君達はそれを迎え撃ち…
人間の心を巡って力がぶつかり合おうとする。

では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神




「…済まない」
「えっ…?」

突然ジャボーがそう言い、思わず彼を見るオリバー。
「奴を真に打ち負かすには、私がその全てを否定する必要があった。
我が心の闇……その居場所はこの私の他にありはしないのだから」
「だからアイツは…あそこまで…」
目の前で、影は怒り狂ったように力を開放していた。

長年彼の中に巣くっていた心の闇。
誕生の理由は、限界を越え崩れる心を保つため…言わば、居場所を失ったナシウスが自らの中に創り出した唯一の居場所だ。
ナシウスは“ジャボー”となってこの“底知れぬ闇”と共生し、それ故いくら傷付いても限界を感じない心を手にした……そのつもりだった。
しかしやがて彼は悟る。
自分は心を麻痺させ、騙して強引に保たせているに過ぎず…そこに自分の本心は無い、と。
こうして“底知れぬ闇”は居場所でなくなり、その存在意義を全否定され今に至る。

「だが、そのせいでお前達を更に苦しめ…─────」
ジャボーはオリバーの手を引いて瞬間移動した。
影の巨大な右腕に襲われかけたのである。
「二人とも…大丈夫!?」
移動先はレイナスの側であった。
「僕達は大丈夫…ありがとう、ジャボー」
突然の瞬間移動に、驚きつつも微笑むオリバー。
そして彼はジャボーと繋がる右手を見る。

「…むしろ嬉しいよ。
僕達もレイナスも…君も…ここまで分かり合えるんだって分かったから」

オリバーにそう言われ、ジャボーも手元に目を落としてハッとした。
瞬間移動しなければ避けきれないと判断し、とっさに彼の手を引いたのだが…思えば自ら人の手を引くことなど、百年以上も無かった。
先程の自分に驚くと同時に胸をくすぐられるような心情になるが、不思議と離す気にならない。
「これだけの恩恵を受けたのだ……見過ごす訳にはいかぬだろう…」
そう言って笑顔の彼から視線を逸らす。

この純粋無垢な感謝の笑顔…まだ、それを受け止めきれるほど素直になれない。

「僕は沢山の人、そして貴方にも助けてもらったんだ……だから、僕も貴方を助けたい。
それぐらいしか僕には出来ないから」
「っ……」
己が生み出した影は、自分一人で消さなくてはならない。
そんな自責の念も和らぎ……この言葉で彼は影に何をすべきか悟った。

「…お前達には感謝もしきれない……お陰で奴との葛藤も終わりが近付いたようだ!」

静かにオリバーと繋いだ右手を離し、影に向けその手から蒼炎を放つ。
胸部の黒い球は肋骨に守られている上かなりの再生力を持つので、オリバーとレイナスが持つ光魔法の他に破壊出来る力はないが…それも肋骨が開けばの話である。
「まずは奴の攻撃手段を封じる…!」
ならば、あの巨大な腕を使用不可にするのが先決であろう。
蒼炎は影の右腕に当たり、僅かながらそれを焦がした。
「奴は胸部を守りつつ我らを相手にすることとなる…単純に胸部を狙えば返り討ちに遭う筈だ」
「攻撃手段さえ封じれば、あの肋骨の破壊に専念出来ると……そういうことですか!」
影がジャボーの魔法で怯む隙に、 今度はエビルナイトが左腕へ大剣を振り下ろした。
頑丈な腕にも傷が刻まれている。

「…成る程な、大体話が読めてきたぜ……。
今度こそ俺の銃の本領発揮だな!」
その様子を見たジャイロが弾を撃ち…─────
「まずはひたすら両腕を攻撃…非常にやりやすいですね!」
ラースも続いて“衝撃波”を発動し、彼を筆頭にして次々と全員が攻撃していった。


影の攻撃は、オリバー達の想定通り両腕を使うものが殆どであった。
右腕から強大な光線“冥界の光”を、左腕からは状態異常を引き起こす特殊な光線“残光の闇”を放ち…魔力を地面から衝撃波として放出する“漆黒の衝動”も使う。
威力の差はあれど、魔物化したジャボーと行動は変わらない…そう思われたが。
「グッ…ヴウウウウゥ……」
怒涛の攻撃と両腕の痛みで反撃も出来なくなっていき、耐えて呻くことしか出来なくなった頃…。

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

突如、全身から魔力を放出した。
「きゃっ…何!?」
「アカン、アカンッ!」
マルとシズク含む彼らはすぐさま防御態勢を取り、その直後……両腕と口腔から三方向に極太の光線が放たれる。

「うぅ…強い……」
「…しかし奴の隙も見えた」
「どういうこと…?」
オリバー達は防御し、ジャボーは瞬間移動をしたためどうにか無事である。
そんなジャボーにも気付いたことがあったらしい。
「あの光線を放った時……あの瞬間だけ肋骨が開いた。
攻撃に意識を注いで胸部の防御を怠ったか…」
「だけどよ…あんなに光線撃たれちゃとても球なんか狙えねぇぞ!?」
「そこで両腕を破壊して、光線を一方向にする…でしょ?」
疑問をぶつけるジャイロに、マルが言葉を付け足す。
「…察しが良いな、賢者の娘は」
「でしょ~!?」
「お、俺だってんな事気付いてたぞ!?
いちおう俺も賢者の息子だからな!?」
ジャボーが感心する様子を見てすぐさま付け足すジャイロ。
だが、影に視線を戻すと表情を一変させた。
「アイツの両腕はもうボロボロだ。
もうひと踏ん張り…今の内に両腕を壊すか!」
自らの攻撃の反動で動きを止めている影。
そこにも容赦なく彼らは攻撃し続けた。
長らく攻め続け、遂に…────────

「ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

程なくして、悲鳴と共に消え失せる両腕。
「良し…あとは肋骨ですね!」
ラースが息をついて言う。
今はこちらが優勢で、影が光線を吐き出すまで待機…という選択肢も取れる。
しかし黒い球が一発で破壊出来るとは思えないので、肋骨も破壊する手を選んだ。



ひたすら肋骨を攻撃し、光線を吐き出される直前に隙あらば光魔法を打ち込んで怯ませ…それを繰り返していく。
頑丈で厄介な腕を破壊すれば、かなり優位に立てる相手である。

一方、影は内心焦っていた。
黒い球の中にある本体は、魔物化した影にとって心臓であり脳でもある。
そこへ触手が神経や脈のように繋がれており、人型をしておりながら臓器そのものと化していた。
そんな本体は理解不能、といった表情を浮かべる。


オリバー達を追い詰める気でいたのに、自分の方がこれほど追い詰められている。
弱点を突かれたから?
…それだけではない、精神までも追い詰められた。
ジャボーの裏切りの後もなお、彼らに心をかき乱される。
というよりは彼らの“心”に。
目に映る彼らの心は、美しく光り輝いていた。
同時にとてつもなく熱い。
そんな中で生まれた一つの強い疑問……。
何故、傷付いたジャボーの心までも…──────

そう考えた時、目の前が白く染まった。


「やっと…壊せた…」
グラディオンとミーティアライトで半壊した球を見て、オリバーとレイナスが息をつく。
「せやけどまだアイツは……」
「いいえ、ここからはジャボーに任せましょう」
レイナスがシズクの言葉を遮った。
そして、彼女は球を見る。
「…彼には彼の考えがあるようですよ」
「あっ…アイツいつの間に!?」
シズクも同じ方を見ると、球の中に乗り込むジャボーが見えた。



影の目の前にジャボーが現れ、ずかずかと球の中に入り込んでくる…同時に心の中にも……。
「…あはは…はひゃひゃ……私はもう…完全に負けたのか…」
乾いた笑いを漏らす影。
…笑うしかない、と言った方が的確だろう。
「女王陛下もお前も…揃って今さら善人面か。
お前達に消された命も心も還って来ない……。
増してやそんなお前達が、あの少年のような英雄になどなれる筈……」
「そんなことは百も承知…だから繰り返さぬと決めた」
影の抵抗は、非力にもジャボーを止められない。
「!?」
突如彼に右手を掴まれ…その瞬間、彼の心が直接流れ込んできた。
「…うぁ……あ…」
影の体が震え出す。

どうしようもなくジャボーの手が熱い。
本来ならば、不死者ゆえ常人より冷たい筈…まさか、これは読心できるから感じる熱か?
否、おそらくヒトなら皆感じられるのだろう。
感じようとするか否かの違いだけで…───────

「こんな真似が出来るとは…私自身も驚いている」
ジャボーが影を見つめて言った。
「……教えてくれ…。
何故お前は…深く傷付いたお前の心は……そこまで熱く輝いていられる…!?」
問いに対し、ジャボーは溜め息混じりに答えた。
「傷付いたから、だろうな…。
“痛み”に耐えることだけが強さではないと……奴らに教えられた」
「…そんなことを言われても…私には分からない……」
「それもそうだろう…お前は他者に頼ることも知らないのだから」
「………。
…私を消さなくて良いのか…?」
ジャボーは手を引いてまた答える。
「そんな真似をせずとも、私は再びお前を受け入れる。
お前の居場所は……私の他にないのだから」
「っ……!」
思わず影は顔を上げた。
目から再び液体が流れている…ただし、今度は透明な涙。
それを見て目を丸くするジャボーに影は言った。

「…眩しすぎるんですよっ……お前達の心は…。
私には眩しくて熱すぎる……!」

一瞬笑ったと思うと、ジャボーは球の中から影を連れ出す。


彼の影に対する決断…それは、オリバーの手を引いたことから決まる。
あの時に感じた温もりを、暗く冷たい“底知れぬ闇”に届かせたい…今の自分なら出来ると思った。
「まずは外界を見せてやろう。
存外居心地の良い場所だぞ……“底知れぬ闇”の中より遥かにな」
その言葉を聞いて影も言った。

「そう言えば……私も今の“二ノ国”を殆ど見ていない…否、見ようとしていませんでした…。
……なら見せてもらいましょうか…お前の中から…─────」

今までとまるで違う、優しく暖かい笑みを浮かべたかと思うと…影も巨大な骸骨も、光の粉となりジャボーに取り込まれるのだった。


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             ~END~