花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part3「眩中模索」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

私もいつの間にやら誕生日を迎えました。
流石にみんな忙しいから、ほんと囁かに祝いましたけども^^;
……にしても秋って体育会系向けイベントばかりでダッッッルいわ((

※追記※
お受験やらタイミングの悪すぎるトゥエストゥやらあと徹夜の代償で異常な眠気と格闘していたため、かなり間が開いてしまいました…申し訳ありません!
orz≡≡≡≡ズサーッ
…その代わり結構長めになりました(´・ω・`)

着々と“罪人”達を見つけ出し、“粛清”していくルーフ。
ジャボーの策は彼女にどこまで通じるか。

では今回も…ゆっくりしていってね
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二ノ国 magical another world

天地照光~金煌なる光の鳳凰~





「…貴様は何者だ……?」

門前に立つエビルナイトは、眼前の者へ問う。
建前でこう言ったものの…大方見当はついていた。

その者は光と共に一瞬で現れ、足が数cmほど、城へ続く石橋から浮いている。
身体には金の欠けた輪をいくつも纏い、足元まで伸びる銀の長髪と鋭く光る赤い瞳を持つ。
そんな姿は…地に舞い降りた女神のようであった。

要するに、彼女が只者でないのは外見からして明らかなのだ。
しかも“銀髪赤眼の女”という、レイナスやボーグの兄弟を襲撃した者の特徴と一致している。

「我が名はルーフ…地上の民へ“時を超えし重罰”を下す者」
「“重罰”……やはり、お前がレイナス様とボーグの兄弟を襲撃したか」
彼はルーフを眼光で刺す。
だが、彼女は平然として言った。
「“罪人”たる彼らへ更なる重罰を与えたのだ。
そして“歌姫”も罰し、残るは“魔導士”と“救世主”のみ」
「……!?」
目を見開くエビルナイト。
また一人、彼とジャボーが気付かぬ内に襲われていた。
“歌姫”という肩書き…そこから連想されるのは一人の少女。
「マルまでも……」
悔やむエビルナイトを、ルーフは食い入るように見つめる。
そうして数秒した後、彼女は言った。
「…そこを退け、“魔導士”の“幻獣”よ。
用があるのは貴公の主だ……我々が争う道理など無い」
その言葉に、エビルナイトは無論……。

「お前に無くともこちらにはある。
…我が主を害さんとする者に……開ける道は無い!」
大剣と盾を発現させ答えた。

そんな彼を更に見つめ、目を細めるルーフ。
「……あくまで主の盾となるか。
極々ひたむきな忠誠心…だがな、我が動くのは貴公らのためでもある」
「…何?」
エビルナイトが怪訝な顔をする。
彼女はそれに応えるべく、言葉を付け足した。
「“幻獣”は心の権化…地上に点在せし心の数だけ、貴公らは生まれる。
…が、人間の心より誕生した場合じつに憫然。
何故なら、人間に従事することが決定されている。
……生まれたその瞬間から、人間の“奴隷”なのだ」
「“奴隷”だと…?」
更に険しい表情の彼。
“奴隷”という単語が妙に引っ掛かる。
「“魔導士”は貴公に何をしてきた?
…かつての奴に、情があったとは到底思えぬが」
「………」
確かに、エビルナイトが受けた仕打ちは酷である。
ジャボーは長年、非情にも彼を“戦力”として扱っていた。

だが、少なくとも“奴隷”ということは無い。
主は心を捨て切れなかったのだ。
かつての行いを深過ぎる程に悔いているのが証で、何より…─────

「ジャボー様は苦しんでいた。
お前にあの方の苦しみは理解出来ないだろう…。
それに…。
今はあの方が私を信じて下さり、私もあの方を信じられる……これで良い」
彼は目を閉じ、深呼吸して大剣を構える。

「……我らは人間の“奴隷”などではない。
互いに心を通わせ生きているのだ。
私があの方に従事するのは…私自身の意志!」
その目を見開いて言った。

「左様か…それが答えとは残念至極」
彼に対するがごとく、金輪を構えるルーフ。
「不本意だが、力を持ってして貴公を解放し…道を開こうか」
彼女の赤い瞳と青い眼光が重なった。




「……来たか…」

薄暗い部屋の奥…王座に腰掛け、静かに佇むジャボー。
これも考えあっての行動である。


初めは、己がレイナスや行方不明の兄弟を捜し、首輪をどうにか外せないか…と考えた。
しかしそこで、重大な問題に気付く。

もし城を出れば、“銀髪赤眼の女”がその間に他の者達を狙うかもしれない。
アテになる手がかりもなく彼らを捜し、外し方も分からない首輪を外す…かなりの時間を食うだろう。
比例して狙われる人間も多くなる筈。
それに、ボーグ軍や賢者など大勢の人間が捜索にあたっている。
更に一人、自分と異なる役割を担う者が…──────

少しでも被害を抑えるよう努めるのが己の役目…そう判断して、城へ女を誘導することにした。


今、女が訪れエビルナイトが相手取っている。
まず彼に指示を下そうと考えた。
比較的、自己判断に優れた“イマージェン”だが…今回ばかりは己の指示通りに動いてもらいたい。
否、でなければジャボーの策は成立しなかった。
なるべく傷付かないように、そして時間を稼げるように……。

“イマージェン”には、主からテレパシーのような形で指示を下せる。
オリバー達もこうして“イマージェン”を操っていた。

次にジャボーは、ルーフへの“読心”を試みる。
この力を使うのも久々で、ヌケガラビトの生産やオリバーの過去を知るために使って以来だ。
そもそも好きな能力ではないので、進んで使わない。
しかし、今こそ使い時ではないかと感じた。
全く不明な彼女の能力…そして目的。
僅かでも分かれば、より長く食い止めることが可能だ。

発動されたその力…だが。
「……!?」
視界全体が一転する。
全面が純白となって目に染みた。
「心が見えん……否、“この光そのもの”が奴の心か」
そう、正真正銘ルーフの心であるのだが…あまりに眩しく情報を読むことが困難だ。
レイナスの場合、彼の能力を調整して“読心”を防いでいた。
しかしこの場合はジャボーの、人の目で見るには耐えかねるものだった…ということだろう。

ただ、何も読み取れなかった訳ではない。

真っ白な空間から様々な解釈が出来る。
眩いまでの信念、全て焼き尽くすような憎悪…白一色で克明なそれらの意志。
更に凝視すればその先を読むことも出来るが、これ以上見続けたら失明してしまう。
「力が及ばぬという訳だ…」
ここで目を犠牲にするつもりはない。
断念してエビルナイトへの指示に専念した。




黒き大剣がルーフの眼前に迫る。
素早く後退すると、それは宙を切った。
彼女は即座に光弾を発射するが、ほぼ同時に盾が立ち塞がる。
硬い音を出し、そこへ弾け消える弾。

「…成る程、接近戦においては申し分ない。
だが…!」
金輪が双方とも片手剣となり、平行してエビルナイトに振り下ろされた。
「閃光は微々たる間に届く」
「なら、それを受け止めるのが我が務め!」
「!」
盾で防ぐには困難な幅を取り、平行する二つの刃。
それも盾から離れた頭上より来た…が、彼は右手の大剣で防いだ。
この場合、むしろ縦長な形状の大剣が防御に向いている。
そして彼は…。
「うぁっ!!」
盾の角でルーフの右肩を突く。
固く締まった腕からの突きは、かなりの衝撃を生んだ。
右手から片手剣が離れたばかりか、3mほど先…彼女の背後まで飛んで石橋に刺さる。
「小賢しい…」
左手の片手剣を大剣から離して、少し下がるルーフ。
もう一方のそれを抜きに行くのは危険と見たか、その場で左手の片手剣を変化させた。
「!!」
大槍となったそれは、刹那にエビルナイトを貫かんとする。
彼も避けきれず、刃が脇腹を掠めた。
「っ…」
鋭い痛みで顔を歪めるが、すぐに大剣を振る。
しかし先ほどと逆に、彼女の大槍で防がれた。
されど身体能力は外見通りなのか、向こうが押されている。
このまま力で押しきることも可能だが…。

下がれ、と少し慌てたような一声。

エビルナイトの脳内に響く、ジャボーからの指示であった。
それにより警戒すると、大槍の刃部分にある赤い宝石が発光し、放射状の光を出す。
石橋に足を滑らせ、その勢いで素早く後退。
これにより閃光から無事に逃れた、が。

今度は“上だ”と主が叫ぶ。

思わず上を見ると…いつの間にか変化した金輪が浮いている。
彼の視線とこちらを向く赤い宝石とが重なり、瞬時に光弾が降ってきた。
反射的に盾を上にかざすエビルナイト。
しかし、弾は苛烈な鞭のように盾を打つ。
「くうぅ…!」
盾を装着した左腕が押され、震えた。
そうして限界が訪れたとき、身を石橋に転がす彼。
上方向からの攻撃は、身を低くするほど当たるまでの時間を延ばせる。
故に走るのではなく、横転でそれと同じ速さを出すことを選んだ。
「今のは…あの槍が瞬時に変化したか…。
片方の武器を封じても尚この速さ……レイナス様らが敗れる訳だ」
だからルーフは“閃光”と自称したのだろう、比喩に恥じない素速さである。
弾を避けた所で身を起こすと、その雨が止んだ。

しかし、静寂。
…妙に意識させられるので、“静寂が聞こえる”と言った方が適切か。
ルーフの気配を全く感じない。
エビルナイトの心中にあるのは、今までの脅威が消えた故の不安と警戒。
「何処に消えた…!?」
左右上下、城門側を見ても見当たらない。
それどころか金輪まで消えた。
必然的に、次は背後に目が移る。
「………」
見えたのは石橋に突き刺さる片手剣。
異様な存在感を放つそれに釘付けとなった。
だがその時、前方より光が来る。
「っな…!」
思わず視線を城門側に戻した。
何も変化はない。
それでも、ルーフが来た、と感じる。
彼女はどこから来るか。どのように現れるか。
どこに──────

「言ったろう、閃光は微々たる間に届く」

背中を打つ強烈な連撃。
再び振り返ると、ルーフが石橋から“生えていた”。
「そんなっ…」
エビルナイトは目を見開く。
片手剣にできた影…そこから彼女の上半身が出ている。
“物理的に”ありえないことだが、こう考えられた。

まず変化させた金輪を上空へ飛ばし、エビルナイトが気を取られる間に片手剣の影へ潜り込んだ。
次に、自分を探す彼に城門側から光を浴びせる。
こうすることで意識を城門側へ向け、死角から金輪を手元に戻す。
そして上半身を影から出し、彼を撃つ。
この一連の流れを、動作一つ一つまでかなりの速度で行ったため、指示を下すジャボーをも欺いたのだ。

「光は影に隠れ…また裂くことも可能。
地上における絶対の法則だ」
「うぁっ……」
言葉と同時にエビルナイトは倒れ、こう悟る。

ルーフが“閃光”と称したのは“素速さ”でなく、自らの“性質”そのもの。
ほぼ人間に見える外見からか、その認識を誤った…そのため完全に翻弄されてしまったのだ。

「…それだけでなく、我と貴公ら…現代の者共とでは戦いへの意識が異なる。
生死を賭けた戦いに……美しい形などありはしない。
特に、純朴な戦士たる貴公はこれを“狡猾”と取るだろう…人への従属により、いつしか人間化されたその意識が隙を生んだのだ」
彼女は不適に笑った。
「そうだ…今や手段も選ばないのが我である。
否、選ぶ余地もない……この憎悪と信念は、人の意識ごときが捉える域にあらず」
そんなルーフが、今や化け物に見える。
下半身を影から出し、片手剣を引き抜く彼女。
それと金輪を消してこちらへ近付く姿が、這い寄る化け物として目に映った。
「うぅ……ぐ…」
立たなければ。
エビルナイトはそう考えたが、体が伴わない。
もともと光に弱い上、光弾が与える衝撃も弾丸並み。
彼が受けた鈍痛は増幅されて…指先にすら力が入らなかった。
「悪いが、貴公の動きを封殺させてもらう。
苦痛が引けば再び道を阻むやもしれん」
そうする内に、側へルーフが来る。
彼女は右手から銀の輪を出した。
武器の金輪より小振りなそれが、彼の首に近付く。
一瞬、蛇のように暴れたと思うと、完全密着する首輪となった。
「あっ……」
体が鉄塊と化す。
体重が何倍にも増量したように感じる。
「待っていろ…主を“粛清”したなら、その後に貴公を“解放”してやる」
遠のく足音と共に聞こえた言葉。
それは胸中に留まり、エビルナイトの意識も遠のいていく。

「……申し訳…ありません…………」

こう言うのを最後に、彼の意識は途絶えた。




「姿を見せろ、“魔導士”よ」
王室に入ったルーフが、声を響かせる。

「私なら既に居る」

男の声と併せ、眼前に現れた巨大な黒球。
「闇魔法か…!」
それが弾ける直前に何とか避ける、が。
「…!?」
いつの間にか、背後にも同様の物体があった。
こればかりは避けられず…。
「うああぁぁっ!!」
黒の衝撃波を全身で受け、床に倒れ込む。
「……奴の仇もあるのでな…こちらも手段は選ばん」
その男、ジャボーは部屋の上方かつ王座の真上に浮いていた。
身に纏うものや髪が、自身の魔力で揺れる。

エビルナイトが倒れたのはかなりショックで、援護し切れなかったので自責の念もあった。
だが、ここで取り乱しては彼の奮闘が無駄になる。
あくまでも気丈に振る舞い…それでも報復せずにいられなかった。
故の暗黒魔法“イーゼラー”二段構えだ。

「流石に…闇を操るだけあるな…」
震えつつ立ち上がったルーフ。
被撃箇所が黒くなり、風化した岩よろしく崩れかっている。
「…閃光が闇を裂くなら、冥闇もまた光を侵す。
“この肉体”にしてもなお、闇耐性は人以下か……」
彼女は己の体を見て呟いた。
闇に弱いらしく、イーゼラーはかなり有効なようだ。
「少々やっかいだ…が、貴公を“粛清”することに変わりはない」
「…“粛清”か、滑稽なことを言う」
「これは決定事項なのだ。
滑稽か否か…その心身で確かめるが良いぞ」
ルーフとジャボー、鋭利な二つの眼光が重なる。

「決定事項が全て上手くいくと思わんことだ……特に、他人を使う場合はな」
先に口火を切ったジャボー。
直後、全身から漆黒の気体が噴き出す。
というより…彼自身がそれになったようだ。
「では……お前を闇に誘うとしようか…」
気体は巨塊となり、王室を暗く染める。


自分を“執行者”にせしレイナスをも倒した、ルーフという女。
正直、まともに相手取って勝てるとは思えない。
だがそれでも良い。
戦うのは勝つためでなく、これ以上の被害を防ぐため。
更に、彼女は先ほど自分と“救世主”が残る“罪人”と言っていた。
最後にオリバーを襲うつもりだろう。
なら、なおのこと彼女を足止めせねば。

オリバーだけは……巻き込んでなるものか。


彼は戦う、勇ましく…そして儚く。

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            ~END~