花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part12「真実」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ
前回から場面も主役も変わっております。
…tkこの小説って主役がハッキリしてないッスね(´・ω・`)
強いて言うなら影…か?
あ、でもジャボsとかエビ君もそれっp((逸れてる
…まあとにかく、グロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。
只でさえボロボロなナシウスsのメンタル…どうなるんでしょうかね((

では今回も…ゆっくりしていってね
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二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクロームの絶対神



「あの者には何が見えているのでしょうか…」

白の宮殿にて、女王レイナスとオムスはナシウスを観察していた。
水晶に映る彼はとある町をさまよう。
「言ったであろう…“真実”だ」
人語を話す鳥の疑問へ女王は答えた。
オムスは少し首を傾げた後に言う。
「つまりは“心”……でございますか?」
「そう、心だけは偽れぬ。覗けば人の本性が瞬時に伝わるのだ…」
それから目を細める女王。
「奴はかつての私そのものよ……
真実を知らずに身近な人間から裏切られ、それでも人間を救おうとし…その行為が逆効果となり…」
王室内に僅かな沈黙があった。
「……しかし、妄想はいつも教えてくれる。虚しい現実ばかりをな。
奴とて同じだ…聖灰により得た力が必ずや、奴の人間に対する“妄想”を打ち砕く」
「…左様で……
ですが気掛かりなのは…これまでの者達と同じく、自滅しかねないことですな」
当然ながら、一万年もの歳月で生み出した“執行者”はナシウスが初めてでない。
理由は違えど、絶望に堕ちた人間ばかりだった。
聖灰は負の感情を魔力へ変換するため、彼らと相性抜群だ。
健常者に与えれば醜悪な魔物と化すが、彼らの場合はそれを越えた不死者へ変わる。

ただ、そんな聖灰もデメリットが多い。
その中でも…聖灰が本人を支配すること。
理性を徐々に奪い、意志に反して破壊活動を行い…やがて本人の肉体すら破壊していく。
そして果てには、彼らの全てが灰となる。

即ち、不死な筈の彼らに訪れる死。

これまでの執行者はそうして消えていった。
皆、長くは保たなかった。
良くても十数年。
聖灰はそれほどまでに強大だ。

「案ずるな…オムスよ」
しかし女王は言う。
「奴の力は、これまでとまるで違う」
「はあ…」
強大な魔力と別に、執行者は本人の個性や心情に合った独自の能力を得る。
そしてナシウスが得たのは…────
「…“読心”…これほど執行者にふさわしい力は初めてだ」
「しかし…それでは寧ろ、彼の心が弱ってしまうのでは?」
執行者が自滅していった原因…それは心の弱さ。
その隙に聖灰が入り込み、執行者を蝕む。
増してや読心など…オムスはそう考えた。
「否、逆だ。この力が心を強くする……心の強さは深い絶望からしか生まれぬ」
レイナスは仮面の下で笑う。

「何より、奴の絶望はこれまでの奴らと格が違う…───」



「誰か…誰か助けて下さい…!」

ナシウスは瀕死の赤子を抱え、町中で叫び続けた。
住民の視線は彼に殺到する。
故に流れ込んでくる声も……。

(何だアレ。嫌なもの見たなぁ…)
(あの人血まみれじゃない…やだやだ…)
(誰か助けてやれよ)

「…どうして……」
彼は声を聞いて愕然とした。
助けたいという意志はおろか、赤子を案ずる意志すら感じられないのだ。
それどころか、こんな声まで聞こえる。

(こんな時代で他人に面倒押し付けるな)
(可哀想に…アイツが殺したんじゃないの?)
(もしかして敵国の人…!?油断させといて皆殺しにするんじゃ……)

あまりに勝手な憶測と決めつけばかり。
「違うっ…!この子はまだ生きてるんだ!!」
だが、彼は状況が伝わっていないだけだと考えた。

(頭狂ってるよ)
(アレじゃあ死なせた方があの子のためだ)
(あんなのには関わらないのが一番)

「…そんな……この子は生きたいと願ってる!俺と違って…この子は…!!」
しかし…彼に向けられる声はあまりにも冷たい。
とうとう涙が出てきた。

いくら他人の子だって…まだこんなに幼い子ではないか。
自分と違ってこの子には未来がある。
それを…見殺しにするつもりなのか。
そんな筈はない、助けてくれる人はきっといる。

涙ながらも必死に訴え続けた…が、住民の心は動かない。
その場を去ろうとする者や、好奇心で見るだけ見て何もしない者すらいた。

「………」
彼は呆然と膝を突く。
気が付けば周囲にはおびただしい数の人が集い、ナシウスへ様々な視線や声が刺さった。
「…誰も…助けてくれないのか……?」

(…ダッコシテ…クルシ……オカアサ……)

「!!」
赤子の声は一層かすれていた。
赤子としての本能か、母親の抱擁を求めている。
…母親が亡くなったことも、彼女から愛されなかったことも知るよし無く。

(……オカアサ…ン……────)

「…!?そんなっ…しっかりしろよ…!」
何も応えぬ赤子。
僅かにあった鼓動も止まった。
「オイ!死ぬなっ!!」
それでも声を掛ける。信じたくなかったのだ。

この子が何も知らず、誰からも愛されずこの世を去った事実。

「…もっと…生きてくれ……」
ナシウスは遺体を抱えうずくまった。
だが、そんな彼に届く心の声は止まない。
あるいは呆れ、あるいは憐れみ、あるいは畏怖…
周囲の人々に、赤子を見殺しにした自覚も罪悪感も無かった。
彼が赤子を殺したかのように罵り、その心を刺し続ける。

「あ…あぁ…」
ナシウスの心は限界に等しく…最早憤ることすら出来なかった。
確かな絶望だけがそこにある。
頭を抱え、耳を塞いでも周囲の“心”からは逃げられない。


また消してしまった…助かる筈の命を。
自分が救おうとした者は皆消えた。
これは自分の無力故だ…周りは悪くない。
ヒトは思いやりの心を持ち、自らの利益に関わらず何かを救うことが出来る生物で…

しかし、今いる人々にそれは当てはまらない。

何故だ…アルテナの人々はそうだったのに。
彼らとこの人々の違いは何だ?
…“心”が見えないから、自分がそう思い込んでいただけなのか?
まさか…今やアルテナの人々もこうなっているのか?
「うあっ…あああぁ……」

違う。こんなのが“真実”な訳ない。

「…ああああっ!うあああああああぁ!!」

“真実”だなんて知りたくなかった。
一体何のための戦いだったのか。
人々を守るどころか…人々を傷付け、心を腐らせるだけのものだったのだ。
自分は何と浅はかなことか。あんなことで平和など訪れる訳がない。

どうすれば良かったのだろう…どうすれば人々を救える?

それを考えたところで、純粋な心は壊れ始めた。

         純粋故に。




沈黙するナシウスへ、長と思わしき中年男性が寄り肩を叩いた。
「…いい加減どいてくれないか?
悪いが迷惑だ…他を当たってくれ。
このご時世、皆自分のことで精一杯なんだよ…────」

瞬間、その腕が消える。

「…え?」
呆然とした直後、強い痛みと恐怖に襲われた。
「ひっ……ぃぎゃああああああああ!!!?」

ナシウスの左腕から伸びた、黒い触手。
それは男性の腕を引きちぎっていた。
僅かに蠢く血みどろのそれを見つめ、彼は呟く。

「…ここに“心”は無いか……」

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             ~END~