皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ
前回から場面も主役も変わっております。
…tkこの小説って主役がハッキリしてないッスね(´・ω・`)
強いて言うなら影…か?
あ、でもジャボsとかエビ君もそれっp((逸れてる
…まあとにかく、グロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。
只でさえボロボロなナシウスsのメンタル…どうなるんでしょうかね((
では今回も…ゆっくりしていってね!
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二ノ国 magical another world
精神融裂~モノクロームの絶対神~
「あの者には何が見えているのでしょうか…」
白の宮殿にて、女王レイナスとオムスはナシウスを観察していた。
水晶に映る彼はとある町をさまよう。
「言ったであろう…“真実”だ」
人語を話す鳥の疑問へ女王は答えた。
オムスは少し首を傾げた後に言う。
「つまりは“心”……でございますか?」
「そう、心だけは偽れぬ。覗けば人の本性が瞬時に伝わるのだ…」
それから目を細める女王。
「奴はかつての私そのものよ……
真実を知らずに身近な人間から裏切られ、それでも人間を救おうとし…その行為が逆効果となり…」
王室内に僅かな沈黙があった。
「……しかし、妄想はいつも教えてくれる。虚しい現実ばかりをな。
奴とて同じだ…聖灰により得た力が必ずや、奴の人間に対する“妄想”を打ち砕く」
「…左様で……
ですが気掛かりなのは…これまでの者達と同じく、自滅しかねないことですな」
当然ながら、一万年もの歳月で生み出した“執行者”はナシウスが初めてでない。
理由は違えど、絶望に堕ちた人間ばかりだった。
聖灰は負の感情を魔力へ変換するため、彼らと相性抜群だ。
健常者に与えれば醜悪な魔物と化すが、彼らの場合はそれを越えた不死者へ変わる。
ただ、そんな聖灰もデメリットが多い。
その中でも…聖灰が本人を支配すること。
理性を徐々に奪い、意志に反して破壊活動を行い…やがて本人の肉体すら破壊していく。
そして果てには、彼らの全てが灰となる。
即ち、不死な筈の彼らに訪れる死。
これまでの執行者はそうして消えていった。
皆、長くは保たなかった。
良くても十数年。
聖灰はそれほどまでに強大だ。
「案ずるな…オムスよ」
しかし女王は言う。
「奴の力は、これまでとまるで違う」
「はあ…」
強大な魔力と別に、執行者は本人の個性や心情に合った独自の能力を得る。
そしてナシウスが得たのは…────
「…“読心”…これほど執行者にふさわしい力は初めてだ」
「しかし…それでは寧ろ、彼の心が弱ってしまうのでは?」
執行者が自滅していった原因…それは心の弱さ。
その隙に聖灰が入り込み、執行者を蝕む。
増してや読心など…オムスはそう考えた。
「否、逆だ。この力が心を強くする……心の強さは深い絶望からしか生まれぬ」
レイナスは仮面の下で笑う。
「何より、奴の絶望はこれまでの奴らと格が違う…───」
「誰か…誰か助けて下さい…!」
ナシウスは瀕死の赤子を抱え、町中で叫び続けた。
住民の視線は彼に殺到する。
故に流れ込んでくる声も……。
(何だアレ。嫌なもの見たなぁ…)
(あの人血まみれじゃない…やだやだ…)
(誰か助けてやれよ)
「…どうして……」
彼は声を聞いて愕然とした。
助けたいという意志はおろか、赤子を案ずる意志すら感じられないのだ。
それどころか、こんな声まで聞こえる。
(こんな時代で他人に面倒押し付けるな)
(可哀想に…アイツが殺したんじゃないの?)
(もしかして敵国の人…!?油断させといて皆殺しにするんじゃ……)
あまりに勝手な憶測と決めつけばかり。
「違うっ…!この子はまだ生きてるんだ!!」
だが、彼は状況が伝わっていないだけだと考えた。
(頭狂ってるよ)
(アレじゃあ死なせた方があの子のためだ)
(あんなのには関わらないのが一番)
「…そんな……この子は生きたいと願ってる!俺と違って…この子は…!!」
しかし…彼に向けられる声はあまりにも冷たい。
とうとう涙が出てきた。
いくら他人の子だって…まだこんなに幼い子ではないか。
自分と違ってこの子には未来がある。
それを…見殺しにするつもりなのか。
そんな筈はない、助けてくれる人はきっといる。
涙ながらも必死に訴え続けた…が、住民の心は動かない。
その場を去ろうとする者や、好奇心で見るだけ見て何もしない者すらいた。
「………」
彼は呆然と膝を突く。
気が付けば周囲にはおびただしい数の人が集い、ナシウスへ様々な視線や声が刺さった。
「…誰も…助けてくれないのか……?」
(…ダッコシテ…クルシ……オカアサ……)
「!!」
赤子の声は一層かすれていた。
赤子としての本能か、母親の抱擁を求めている。
…母親が亡くなったことも、彼女から愛されなかったことも知るよし無く。
(……オカアサ…ン……────)
「…!?そんなっ…しっかりしろよ…!」
何も応えぬ赤子。
僅かにあった鼓動も止まった。
「オイ!死ぬなっ!!」
それでも声を掛ける。信じたくなかったのだ。
この子が何も知らず、誰からも愛されずこの世を去った事実。
「…もっと…生きてくれ……」
ナシウスは遺体を抱えうずくまった。
だが、そんな彼に届く心の声は止まない。
あるいは呆れ、あるいは憐れみ、あるいは畏怖…
周囲の人々に、赤子を見殺しにした自覚も罪悪感も無かった。
彼が赤子を殺したかのように罵り、その心を刺し続ける。
「あ…あぁ…」
ナシウスの心は限界に等しく…最早憤ることすら出来なかった。
確かな絶望だけがそこにある。
頭を抱え、耳を塞いでも周囲の“心”からは逃げられない。
また消してしまった…助かる筈の命を。
自分が救おうとした者は皆消えた。
これは自分の無力故だ…周りは悪くない。
ヒトは思いやりの心を持ち、自らの利益に関わらず何かを救うことが出来る生物で…
しかし、今いる人々にそれは当てはまらない。
何故だ…アルテナの人々はそうだったのに。
彼らとこの人々の違いは何だ?
…“心”が見えないから、自分がそう思い込んでいただけなのか?
まさか…今やアルテナの人々もこうなっているのか?
「うあっ…あああぁ……」
違う。こんなのが“真実”な訳ない。
「…ああああっ!うあああああああぁ!!」
“真実”だなんて知りたくなかった。
一体何のための戦いだったのか。
人々を守るどころか…人々を傷付け、心を腐らせるだけのものだったのだ。
自分は何と浅はかなことか。あんなことで平和など訪れる訳がない。
どうすれば良かったのだろう…どうすれば人々を救える?
それを考えたところで、純粋な心は壊れ始めた。
純粋故に。
沈黙するナシウスへ、長と思わしき中年男性が寄り肩を叩いた。
「…いい加減どいてくれないか?
悪いが迷惑だ…他を当たってくれ。
このご時世、皆自分のことで精一杯なんだよ…────」
瞬間、その腕が消える。
「…え?」
呆然とした直後、強い痛みと恐怖に襲われた。
「ひっ……ぃぎゃああああああああ!!!?」
ナシウスの左腕から伸びた、黒い触手。
それは男性の腕を引きちぎっていた。
僅かに蠢く血みどろのそれを見つめ、彼は呟く。
「…ここに“心”は無いか……」
~END~