はい、こっちで書くことになったオリ小説ですが、何故いきなり4話なのかは前記事を見て頂ければよろしいかと。
尚、読むにあたっての注意事項やあらすじもそこにあります。((メンドクセェ……
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二ノ国 magical another world
精神融裂~モノクロームの絶対神~
「あれは…ジャボーの魔法の強化版と言ったところか」
影が発生させた、巨大な蒼炎の渦を見てジャイロが呟く。
影はジャボーの力を取り込み、より強く変化させたらしい。
「アナタ方はあらゆる脅威にも耐え抜いたそうですね…」
すると影は表情を一変させ、口元が裂けるような笑みを浮かべた。
「…なら、これで灰と化したりはしませんよね?」
影が大きく杖を振り下ろすと…渦は鞭となってオリバー達を襲う。
「速い…!?」
流石というべきか、辛うじて彼らは避けたが…岩場の表面に生い茂る僅かな緑が蒼く光り、間もなく黒へ変わった。
「まだですよ!?」
声と同時に蒼炎の鞭が往復して再び彼らを襲う…その同時のこと。
「!?」
一瞬にして大量の雫が発生し、炎を打ち消した。
「リースト…!」
「申し訳ありません…かなり危険と判断しました故」
現れたのはラースのイマージェン、ルイドと化したリーストであった。
彼女は相手が相当危険な存在だと判断し、自らの意志でラースの懐から現れたのだ。
「いや…ありがとう」
ラースが優しく微笑みかける。
そして、リーストが影を見詰めてエビルナイトへ言った。
「アレが貴方の主だなんてね…俄かには信じがたいわ」
「…否、アヤツはジャボー様の体を利用しているに過ぎない。一体奴が何なのかは知らんがな」
エビルナイトが少しの間を置いてから返す。
「わざわざ人間同士の戦いに割り込んで来るとは…。
……皇帝の心の一部だというのに、何と躾のなっていないことでしょう」
そんな彼らのやり取りを見て影が言った。
それは、リーストに対して辛辣な言葉である。
「…何と言ってくれても結構。私は主とその仲間を守るだけ」
しかし当の彼女は、全く気にすることなく影を睨み付けた。
「主、主と小五月蝿い生き物ですねぇ…貴方達は……」
「己が信じる者を守る…それの何がいけないのですか?」
影の言葉に、ラースは反論する。
イマージェン全般を侮蔑するかのような彼の言動が許せなかったらしい。
「…いけないとは思っていませんよ。只……
随分と生半可だと思いまして」
「どういう意味です?」
その問いに、影が僅かな間を置いてから答えた。
「それ程主を想っているなら、何故自己判断で飛び出したりするのですか?絶対服従とは主に命じられたことのみを実行することですよ?
先程は良い結果に終わったからよろしいですが…勝手な自己判断が最悪の事態を招くこともあります」
それから、影は赤い瞳でエビルナイトの方を見詰める。
「…そちらの者にしても…現実に向き合ったことは賞賛に値するが、まだ迷いが見える」
「っ……」
影の言うことは的を得ていたようで…エビルナイトは表情を引きつらせた。
「斬るつもりなら本気でこの体を斬ってみせなさい。
生半可な覚悟で私を止められるとでも…?」
「ちょっと貴方、いい加減に…───」
先程からの影の言葉とエビルナイトの様子に耐えかね、マルが声を鋭くして言いかけた時…。
「…まあ、全てどうでも良いことですがね!!」
影は大声で言いつつ、両腕から黒い触手を勢い良く伸ばした。
その刹那。
「想ってるからこそ勝手に飛び出したり躊躇ったりすんだよっ!!」
大量の触手が全て斬られ、電圧を受け、引き千切られ消え失せる。
「お前ら…!!」
「助太刀するッスよ、兄貴!」
「ボクだってやる時はやるよ!」
降り立ったのは、オリバー、マル、ジャイロのイマージェン達。
「次から次へと……」
影は苛立った様子で呟く。
そんな影へ、オリバーのイマージェンであるガルッチへ進化済みのルッチが言った。
「久し振りだよ…俺達がこんなアンタを見たのは。しかも更に酷くなりやがって……」
「とりあえず、何とか大人しくさせれば良いんだよね」
続いてマルのイマージェンのセバスチャン、セバが言う。更に、ジャイロのイマージェンであるブランボー、ブロッケンが言った。
「出来れば自ら目を覚ましてくれると良いんスけどね…」
三体がそう言った後で、影は突如笑い出す。それから静かに言う。
「…どうしてこうも皆勝手に出てくるのか……理解に苦しむ」
「んなの嘘だろ?」
ルッチが言った。
「……何ですって?」
「似たようなことを幾度となくやってきたアンタが…俺達やエビルナイトの気持ちを理解出来ない筈ねぇんだよ。
…寧ろ、痛いほど分かるから強く否定してるように見えるぜ」
ルッチにそう言われ、再び影は笑い出す。
「フフフフ…確かにそうかもしれませんね」
言いつつルーンと思わしきものを宙に描き出した。「……ただし“この男だったら”、の話ですが」
描き出されたルーンは蛇や鳥、猛獣を想起させる複雑なものだ。
「な、何やあのルーンは!?」
見たこともないルーンにオリバー達は戸惑う。
そんな彼らを見つめ、影が微笑みながら語った。
「禁忌に値する魔法…“キメラ”。灰の女王がこの男に与えた聖灰の力と、私が操る闇あってこそ生まれた代物ですよ」
そう言った後、影が突如身をよじる。
彼は全身を覆うように両腕を交差させた。
そして、黒い翼より下の辺りから…四頭二対の白大蛇が影の背を突き破って生えてくる。
「なっ……」
「…化物が……っ」
オリバー達はその異様な光景に目を見開いた。
エビルナイトに至っては、そのまま何も口に出せない状態である。
「…失礼極まりない……人を超えたと言って頂きたいですね…」
強い苦痛があったのか、影が息を乱しつつ言う。
しかし彼はすぐに体制を整えて続けた。
「これもまた魔法でして…己や他者を人外へと変化させ、化物を無尽蔵に生み出す禁忌の力ですが、同時に新たな生命を創造出来る奇跡の力でもあるのです」
警戒するオリバー達に向けて影は更に続ける。
「…これは貴方達の持つ力にしても同様。魔法が禁忌となるか奇跡となるかは操る者次第ですよ」
言い終えた後……影は狂気に満ちた笑顔で言い放った。
「只でさえ大人数の貴方達が、更にその数を増やしてきましたからね……私は敢えて禁忌を犯すことにしましょう」
四頭の白大蛇は、鎌首をもたげてうねり出した。
~END~