花柵わわわの二ノ国箱庭

主に二ノ国の二次創作をやっております。たまに別ジャンル・オリキャラあり。動物も好き。 Twitter始めました→https://mobile.twitter.com/funnydimension

【二ノ国小説】part2「護りたいがため」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

迷いに迷った末に進路や将来というものを定めることが出来て、((遅過ぎ
あとは前進するのみとなりました。
…何故だろうか、進路考える時が一番“青春”を感じる((ぅえ
学生の皆様、進路や将来を考える時はくれぐれも真剣に。
真面目に考えると案外楽しかったりしますよ(゚∀゚)

p.s ついでに一つ教えよう…。
夏休みの課題は8月下旬から取り組むのが正しいやり方なんだZE☆(((氏

力を持つ人間を“罪人”と称し、その一人としてレイナスに襲いかかるルーフ。
対する“罪人”達は如何にして彼女を迎えるか。
そして何を思って迎えるのか……。

では今回も…ゆっくりしていってね
───────────────────────

二ノ国 magical another world

天地照光~金煌なる光の鳳凰~





ルーフは始めに、金輪をレイナスへ向けて振り下ろす。
「ふっ…!」
一方レイナスは、やや押されつつ右手の手甲で受け止めた。
そこに襲いかかるもう一つの金輪。
「うっ…ぐぅ…!」
左手の手甲も使って防いだものの、両手が塞がったうえ更に押されてしまった。

ここで後退すれば、二つの金輪に殴打される。

予想した彼女は脚に力を込め、反撃の隙を探しつつ耐えた。
しかし──────

「…甘い」

突如、片方の金輪を手甲から引き離すルーフ。
瞬時に装飾の赤い宝石が発光した。
「!?」
ほぼ同時に、そこから3発の光弾が散る。
レイナスは本能的に危険を察知し、もう一つの金輪から手を引いた。
次に弾を避けようと試みるが、右肩が3発の内の1発に被弾。
「あぁっ!」
刹那で変わる攻撃法に動揺し、対応が遅れたためである。
彼女は右肩を押さえ、ルーフから離れた。

「ぅあ……うぐ…」
被弾部分は僅かに余熱を残して、煙がほのかに漂う。
固体の弾丸と異なり貫通はしないが、そのぶん衝撃は全て肉体で受け止めることとなった。
故に鈍痛は骨の髄まで響き…糸を引いてレイナスに纏わりつく。
「この“輪”は単なる武具に非ず、貴公らのそれからして常軌を逸する代物なり」
ルーフの胸元で交差する金輪。
「詮ずるところ、貴公らの常軌を逸するに同じ」
それは再びレイナスの方を向き、双方ともに装飾が光った。

「だからと言って…私が退く理由はありません…!」

震える右手をかざして、レイナスは“魔法封じ”を発動させる。
「…!」
一時的に対象の魔法を封じることが出来る上級魔法。
それはルーフ相手でも効果を発揮し、金輪の光を消した。

「魔法使いと称される者達は、おおよそ接近戦が不得手である。
魔法を発するに、一定の時間と精神的集中を要するためだ。
故に対象とは相応の距離を保たねばならない……」

突如、ルーフが魔法使いの戦法について語り出す。
「先刻の動きを見るに、貴公とてそれは同様か…」
言葉のあと、今度は金輪を上空に浮かせた。

“魔法使い”というものを熟知しているかに思える彼女の言葉。
金輪から降り注ぐ光弾の雨。

それだけで窮地に追い詰められたと感じたが…。
「今度は光の全体攻撃ですか…なら!」
次なる策を考え、レイナスは更にルーンを描く。
「……より強く、より高密度な光で打ち消す!!」
彼女の有する光魔法“ミーティアライト”。
発生した光球が床に接触すると、それは密度を保ったまま拡大していき…文字通り光弾全てを打ち消しながら弾けた。
「ぬ……!?」
ルーフは強い光を目にして身構えるが、この単純かつ平坦な場でミーティアライトから逃れることはほぼ不可能であった。
「ぐうぁっ!!」
光の衝撃波と共にその身が吹き飛ぶ。

「貴女が例え私の全てを把握していても、私の力が通用しないとしても……私は抵抗し続けます。
ようやく“希望”を取り戻したから……現代の人々が、こんな私に“希望”をくれたから…」
静かに響くレイナスの声。
青い瞳は、湖面のごとく粛々と揺れている。

「…今度は私が護りたい。
彼らの“希望”……そして“笑顔”を!」

「“希望”…か。
…“罪人”め、貴公らがよく左様な世迷い言を────────」
起き上がりつつ言うルーフの言葉を、突然の光が遮った。
「……!!」
彼女は脊髄反射により目を固く閉じる。
どうも、この光はレイナスの身体から生じているらしい。
彼女の強大な魔力、それが一気に開放され具現化したのだろう。


光が止み、ゆっくりと瞼を動かすルーフ。
赤い瞳が映し出したものは…。
「“女王”よ…人を護りたいがため、自ら人を抛つか?」

虎や獅子や馬…それらを彷彿とさせる姿を持った、白く美しい巨獣だった。

「……およそ一万年間、心身ともに停留していた貴公すら…今や日進月歩すると言うのか…」
言いつつ、彼女は金輪を手元に戻す。
「その“希望”に基づいて積重されし努力、認めよう。
…認めた上で……」
それらより突如として生える刃。
金輪はそれぞれ片手剣に変わった。

「如何にそれが脆弱であるか、論理的かつ物理的に証明してみせようぞ」



その翌日、ルーフの所業は民間人までも認知することとなった。
故に彼らも動き出す…───────






~ナナシ城・王室~

「馬鹿な……女王様までもが…」
「ええ…“あの兄弟”を誘拐した者が、自ら戦闘中に語ったとのこと…」

かつて“死者の湖”と呼ばれ、今は生命を育む場と化した巨大な湖…その湖面に浮く漆黒の城・ナナシ城。
城主たる“漆黒の魔導士”ジャボーへ、彼の“イマージェン”であるエビルナイトが伝えた内容は衝撃的であった。



ボーグ帝国皇帝の居城に、とつぜん銀髪赤眼の女が現れた。
彼女が現れたのは“皇帝”かつ“賢者”ラースの眼前…つまり皇帝部屋である。

彼の所有する機械城の周囲と内部は、大勢の兵士が警備に当たっていた。
故に、誰にも気付かれぬまま皇帝部屋まで行くことはかなり難しい。
例外として、オリバー達が兵士に変装するという手を使ったが…あれも一時的な策であり、ラースの兄であるジャイロ無くして成功はほぼ不可能だろう。
どのような策を取ったにせよ、只人ならぬ存在には違いないが…事件の少し前、僅かに光が通り過ぎるのを見た兵士が何人かいるらしい。


彼女は直後にラースを襲った。
戦闘をするのに皇帝部屋は不向きで、一層彼を不利な状況に追い込んだ…が、彼はあえて外に誘い出そうとはしない。

城外には兵士がいて…国民もいる。

人を殺すことも躊躇しないであろうこの女との戦いに、彼らを巻き込むのはあまりに危険と判断したのだ。
すなわち自己犠牲の一環とも言えよう…ラースの体は程なくして限界を迎える。
その時だろうか…彼の名を叫びつつ、部屋の戸を勢い良く開く男がいた。

兄のジャイロである。

城内の異変にいち早く気付いた彼は、大通りの通行人に危険を知らせつつ押しのけ…事情を知らない兵士達の制止も構わず、国民に避難を促すよう指示して……ひたすら弟の所へと走ったのだ。


かくして、二人は人気の無くなった大通りに女を誘い出し共に戦った。
兵士達も彼らの援護や国民の護衛に周り、国民は建物内から見守り続ける。

だが、戦闘により体力を消耗した二人は突如その場に倒れた。

彼らの首に、いつの間にか銀の首輪が取り付けられていたのだ。
女が弱った隙を狙ったのだろう。
それには何かしらの魔力が込められているようで、ラースはピクリとも動かない。
その様子から“皇帝の死”と見間違え、顔面蒼白となった者も多かったらしい。
一方のジャイロは…気力によるものか、首輪の魔力に屈せず弟の首輪の破壊を試みる。
己と違い、弟はこの国を背負う存在であり…何より己が護りたい存在だ。
彼がラースの救助を優先するのは至極当然であった。

その想いも虚しく、傷一つ付かない首輪。

気力で抵抗するにも限界が訪れて…彼も動かなくなった。
取り乱す国民の声と、彼らの仇討ちとばかりに乱撃する兵士達。
それらを相手にすることもなく、女は二人と共に発光して消えた。


この誘拐事件は瞬く間に人々へ知れ渡る。
現在では国ぐるみで二人の捜索に当たると同時に、ボーグ軍“近衛隊長”ズッカが皇帝の代行者となっているという。



「…すると、その者が狙う人間には法則性が伺える」

ジャボーはまず、冷静に考察をした。
その上で、自らが行うべき最善の行動を見出すつもりだ。
「より強大な力、あるいは権力を持った人間…でしょうか」
エビルナイトもまた、彼の意図を察して協力する。
「やはり次は各国の国王か賢者か……。
だが、女王様の次にボーグの兄弟という順序や人選、これには別の法則性もありそうだ」
「と仰いますと…国王や賢者以外にいくらか思い当たる人物が居ますね」
単純な力や権力だけではない、襲われた個人個人を繋げる共通点。
それは…。
「……悲しみの世を救いし“救世主”。
そこに力を添えた者達」
ジャボーが独り言のように呟く。
「残るはマルとオリバー……それから──────」
「…私も含まれる、か?」
エビルナイトが具体的な名前を挙げ、考えていると主がその先を言う。
「その可能性は大いに…」

「我が元にその者が現れるか否か…いずれにせよ、果たすべきことは決まった。
…エビル、お前は普段と同じく門前に立て」

ジャボーが復活し償いに努めて以降、エビルナイトは門番としてナナシ城を守護している。
「ですが…」
その者が狙うのはあくまでも“人間”。
己の力が及ばぬ所で、ジャボーが襲われる可能性もあるのだ。
それに、その者は強大な力を持っている。
いくらジャボーと言えども、彼女と戦えば…。
「案ずるな…私はただ、護りたいがためにその者を迎え撃つ。
そこまで無謀な真似はしない」
彼の心中を察してジャボーが諭す。
「……承知致しました」
具体的にどんな策を練ったかは分からない。
だが、今は言葉通り主を信じることにした。
「そして…」
「…?」
「仮にその者が門前に来たら……お前も無茶な真似はするな」
「…はい」

納得した様子のエビルナイトを見て、ジャボーはどこか悲壮感のある微笑みを浮かべる。
己を案じてくれることへの感謝と同時に、何かを護るため抵抗したレイナスやボーグの兄弟の心中を察し、やりきれない気持ちになったのだ。




そして、その者は二人の想像以上に早く訪れる。



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            ~END~

【二ノ国小説】part1「罪人共に告ぐ」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

いよいよ始まった新章、前回より色々力を入れてまいりたいと思います(゚∀゚)


……余談ですが((いきなり何
二ノ国をちょろっと知ってる後輩がいまして、話の成り行きで当ブログに載せたレイナスさん(前回の小説part7の挿絵)を見てもらったところ
「…おや、何か色っぽい。
てか先輩けっこう盛ってますねぇ……w」
とのこと。
“盛ってる”ってのは言わずもがn( 自 主 規 制 )
…や、あのね…当時は何故か「多分そこそこあるよね」というイメージを抱いてたのさ((
仮面状態が色っぽい…てかあの状態の時はわりかしデカかった記憶があったんで(´・ω・`)
で、公式の緑髪レイナスさんを拝見したところ………




す、少なくともマルちゃんよかデカい筈だもんね!(震え声)
(以上、書くことに困った筆者が絞り出した雑談でしたとさヽ(^o^)丿)

二ノ国を脅威に晒さんとする者、またも現る。
しかし、立ち向かう者はもはや救世主達のみに留まらなかった。

ではでは、今回も…ゆっくりしていってね
───────────────────────

二ノ国 magical another world

天地照光~金煌なる光の鳳凰





「ようやく…光が満ちた……」


二ノ国のとある地下空間。
そこは薄暗く、ほのかに土が香る。
更に何者の侵入も許さぬ厳粛な空気が漂っており……さながら古代遺跡のようだった。 
「己を封じ、臥薪嘗胆して取り戻したこの力…」
中央で声を響かせるのは、膝を突き全身を帯に巻かれた人物。
包帯にも見えるそれには模様が入っており、何かしらの魔力が込められていた。
「人間へ衝突させる時が来た…!」
言いつつその者は光を放ち、帯を断ち切る。
光は空間内を照らし、その者の姿も露わにした。

欠けた輪のような装飾を幾つも纏った女。
その足元まで伸びた銀の髪と、赤い瞳の強い照り返しは……彼女の揺るがぬ信念を現す。
「…これまでよくぞ我が眼となってくれた」
女は出入り口の方を見て言った。

「貴女に地上の様子を伝えるのは僕の役目ですので…。
…それよりも…いよいよなのですね」

そこには仮面を付け、銀の欠けた輪を纏う少年が立つ。
彼は女と同じく銀の髪を持っていた。
「ああ…幸福に溺れた人間に想起させようぞ。
そのため流れた我々の血が…どれ程であったか……───────」
そう言って地上へ向かう女を見送ると、やがて少年も地上へ出るのだった。





~白の宮殿・王室~

「あ、貴女は何者ですか…!?」

女王レイナスは戸惑いつつ尋ねた。
彼女の前に立つのは、地下より出た女。
遥か上空に浮く白の宮殿を見つけ出し、女王の元へ辿り着くのは只人ならぬ所業だ。
「間違いない…地上の民・人間内でも危険因子たる“罪人”」
女はレイナスを見つめ、両手に金の大ぶりな輪を発現する。

「……我が名は“ルーフ”。
貪欲なる地上の民を滅却せんとする者だ」

「何ですって……」
レイナスは驚愕し、その直後に真剣な表情を浮かべた。
「つまりは人間の敵、ということですか!」
「左様だ…人間は他の生物、そして世界に対しあまりに危険な存在」
「……ならば答えは一つ、ですね…」
「後には退かせぬぞ、“女王”よ」
ルーフは二つの輪を武器のように構える。
「退くものですか……。
人間だって他の生物や世界と共存できる…何よりそうありたいと願い生きているのです!」
応えるようにレイナスも身構え、その場をかつてオリバー達と戦った異次元空間に変化させた。
「…やはり人とは相容れんな」
一面に広がる宇宙空間を見回すルーフ。
「ならば“罪人”共に告ぐ。
貴公らの有する力そのものが重罪だ。
故に…─────」
それからレイナスに飛びかかった。


「これより“粛清”を執り行う…!!」


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           ~END~

【二ノ国小説】影編補足&新章のお知らせ

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

色々と拙いながらも無事完結を迎えた
二ノ国 magical another world
精神融裂~モノクローム絶対神~」(※以下「影編」と呼びます)ですが、影の目的やら何やら云々を付け足しで簡潔に説明したいと思います。
…要するに、小説内で語りきれなかった部分の補足ですかね(´・ω・`)

※下記の説明や設定は、全て筆者の二次創作に基づいてのものであり“非公式”なので、予めご了承下さい。



~ナシウス青年の発狂、そして凶行に至るまで~
(参照:part12~13)
身よりもない瀕死の赤子を連れ、町で助けを求めたナシウス青年。
しかしそこで、彼は更なる絶望を味わう……。
…てなことがpart12~13でありましたが、この中でナシウス青年の“心の闇”…影は誕生しました。
どのようにして誕生したかと言いますと…

「そんな…誰も助けてくれないの?」
 ↓
「皆の心は何かおかしい、まさか戦争のせいで…」
 ↓
「戦争で国や民は守れないのか?心を腐らせるだけだったというのか!?」
 ↓
「じゃあ、どうすれば皆を救えるのさ…」
 ↓
「……そうか、“心”だ。
どうせこんな風に傷付いたり腐ったりするモノなら、いっそのこと無い方が楽になれるじゃないか」
 ↓
「心の見える今なら、取り除いてあげられるかも…ドコ?心ドコ~~~?」

こんな感じです…適当スマソ<(_ _)>
(※文才が無いため他の部分もこの形式d((氏)
“心を取り除けば良い”という考えが浮かんだ、と同時に誕生したのですね。
赤子を見殺しにした民衆への憎悪と、腐った心から解放してあげたいという優しさ、そして“絶望”が入り混じり……ものっそいカオスな心理状態となっております((
で、純粋な心はそれに耐えきれず崩壊。
こうして“心の闇”は誕生し、彼は狂おしいまでの優しさと怒りをぶつけましたとさ。

なお、小説内では後々“ヌケガラビト”を大量生産(((
する根本的なきっかけになってたり。


~影の描いた理想郷~
(参照:part7、17~18)
“ジャボー”と名を改めたナシウスが成熟し、青年時代より理性的になってから、彼も意識出来ない深層心理内へ漂うこととなった“心の闇”。
深層心理に留まった故、ジャボーの目的は
「人間から心を消し去る」→「心の一部を奪い、争う人々を抑制する」
へと、やや軟化しました。
しかし、ジャボーがオリバー達に敗れ消滅した直後、居場所を失った“心の闇”が自我を持って行動。
目的は無論、「人間から心を消し去る」という、彼が封じた筈のもの。
自我を持った影はそのために、復活したジャボーすら飲み込もうとします。
では、そこまでして影が創りたかった世界とはどんなものなのか。

「人間を他の生物と同化させる」
「皆平等に幸せ」
「情を持つ者は徹底的に排除する」
「何があっても皆笑っている平和な世界」
「痛みを感じぬ“閉じた心”こそ人間の行き着くべき所」

「これは人間を愛してこその決断だ」

「生きとし生ける者のための“理想郷”」
「人間のための“絶望郷”」

上記の影の言葉(※一部)をまとめると……

「心が無ければ、人々は互いを憎むことも傷付くことも絶対に無い」
 ↓
「つまり争いも絶対に起こらないから、完璧な世界平和が実現」
 ↓
「競争のない社会には格差もなく、人々が誰かを嫌うことはない(※愛することもない)ので、皆平等で幸せに生きられる」
 ↓
「そんな人間達を不死である私が統制・管理し、心を持つ人間や反乱因子を魔法“キメラ”で強制改造(※それでも無駄な場合は処刑)すれば、内乱やクーデターなど有り得ない」
 ↓
「まさに完全無欠の理想郷!
(※ただし“自由”があるとは言っていない)
…いや、人間にとっては絶望郷かな?
それで永遠の平和と幸福が実現するとは…何とも素敵な皮肉!」

…てな感じですかね。
オイそこ、「長過ぎワロタ」とか言うn((黙
まあ、完全無欠には間違いない…が、空虚な偽りの理想郷でもある。
やってることは「心までも消される独裁」ですし…おすs((氏
こんな方向に考えが歪んだのも、影自身“平和”“幸せ”“平等”を言葉でしか知らないから…と言ったところでしょうか。
それらを実感したことが無いため
「“心”が無い限り、この3つを“本当の意味で”実現することは不可能」
ということも知り得なかったのですね。

最終的には、オリバー達やジャボーからそれを学ぶこととなりました。


~余談~
☆ジャボーさんが昔バンバン使ってた触手を発現しなくなった理由
→“執行者”として活動する内に
「触手」=「無闇に苦痛を与え、時に殺めるためだけの道具」
という認識が生まれ、使用に強い抵抗を覚えてきたため、“敢えて使用しなくなった”。
なお、今は影が自立したことに伴って使用不可能に。

☆影が自立したてのころ、レイナスは三国に“聖灰”をバラまいたが、一方影は何をしていたのか
→自立したとは言え、初期はまともに話せるかどうかも怪しい存在でした。
人間で言えば「立ったばかりの赤子」状態ですから、特に目的もなく二ノ国をうろうろと。
そうする内に急成長し、目的を思い出した影は手始めに霊魂の集う“ゴーストの谷”を目指しました。
その頃には聖灰云々も解決済みだったとさ。
(※なのにpart8で評議会云々言っていたのは、ジャボーの肉体から彼の記憶を得たから。
そのジャボーも、自分が消滅してから復活するまでの間の話をレイナスやオリバー達から聞かされた)



ふう、我ながら長i((黙
文章をまとめる能力に乏しいため、予定外に長くなりました…すみません川orz





…改めまして、タイトルの通り今回はもう一つの件…そう、二ノ国小説新章のお知らせがあります。
オイそこ、「文才も画力も無いksが新章とか生意気じゃ」とk(ry
注意事項は影編の時と同じく

・公式通りのキャラ&世界観は期待せずに

・非公式な二次設定&オリキャラ有り

・イマージェンが擬人化&喋る

・グロ表現有り

・クリア後の設定だからネタバレ多数

・滲み出る文才の無さ

・誤字脱字あるかも

・k s な 挿 絵 有 り

…です。
ただ、新章は影編より二次創作色が濃くなると思います。
一つ言っとくとまたオリキャラが出ますし((ヲイ

話の方向性は…影編が“どシリアス”だったんで、今回はそれよりライトにしたいですね。
影編は内容の都合上キャラが遊ばな過ぎた((何



今回のクッソめんどいトゥエストゥが終わったらpart1を書き始めますので、良かったらどうぞよろしくです(*・ω・)ノシ

【二ノ国小説】part20(最終話)「精神融裂」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

とうとうこのシリーズも最終回を迎えました…tk無事に迎えられてこの上なく嬉しいです(´;ω;`)
内容や文才はともかく…見て下さった方々のためにも、きちんと完結させるのが一番だと思いますので。

さて、この小説にh……と言いたいところですが、今回は特に問題なく閲覧出来る筈。
強いて言うなら…オリキャラや二次設定が含まれております((いwwまwwさwいwらwww

「心があるから人は“痛み”を糧にし、反省も成長も出来る生物となり得た」
そう実感した影はようやく感情を取り戻し、再びジャボーさんの心に還ったのだが…。

では最後まで…ゆっくりしていってね!!(*´∀`) ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神






「ぷぇええええええぇぇっっしょおおおおおおぃっっっ!!!」




極寒の地に佇む大氷河穴…その最奥で、青年のくしゃみと思われる奇妙な大声が響いた。

「……ううううぅっ、寒い寒い寒いっ!?
こんな所で寝ていたのか僕はぁ!!
普通なら永遠の眠りに陥ってるところだろっ!!」
ナシウスは起き上がるなり叫ぶ。

“ナシウス”……とジャボーに名付けられたこの青年は、彼の“心の闇”が具現化して誕生した。
そう、今居るナシウスはジャボーの手で生まれ変わった影である。

「…でもフワフワしたものが…背中に……?」
そう言って振り向くと、氷狼…アングレイクが不機嫌そうに彼を見ていた。
「……起こしちゃったか…ごめんな、うるさくして。
お詫びに君の体を温め……て駄目だよね」
苦笑しつつ、掌に灯した蒼炎を消す。
これで暖を取ろうと思ったのだが、アングレイクが炎を苦手とするのを思い出し却下した。


ナシウスが何故ここに居るかと言えば、それは5時間ほど前に遡る。
世界放浪の最中、大氷河穴付近の町…サムラを通りかかり、そのとき住人と思われる少年に話しかけられた。
「あ、あの…」
「…ん?」
「ナシウスさん…ですよね?」
ジャボーやレイナスには及ばないが、世界を放浪する内に彼の名も自然と知れ渡った。
「如何にも……ジャボーと共に絶賛更正中の僕がナシウスさ」
「は、はぁ…」
少年は独特な言い回しに戸惑う。

ナシウスは“心霊”という、霊体と肉体を持ち合わせた…つまり霊化も実体化も出来る生き霊だ。
ジャボーの心の一部であるためか、ココルと似通った特徴がある。
霊体時は本体のジャボーや、同じく心から生まれる魔物“イマージェン”の目にしか映らぬ存在だが、実体化しても万人に彼が見える訳ではない、ということ。
ココルも心霊だったのか定かではないが…彼女の姿も“一ノ国”では一ノ国の住人にだけ見えて、“二ノ国”では万人の目に映った。

ナシウスの場合、その肉体は“彼が心を許した者”の目に映る。
つまり…彼に警戒された者や、彼にとっての敵にナシウスは見えない。
逆に言えば、一般人は問題なく彼と接することが出来る。

「お願いがあって、近くの洞窟にいる狼のことなんですが……」
ナシウスに向け、説明に入る少年。
「“三従者”アングレイク…グレイだね?」
「はい、それで…長老や皆があの狼のことを気にかけてるようなんです」
「それなら心配いらないよ…アイツは人を無闇に襲うような犬じゃない」
サムラの住人がグレイを恐れられている…そう思ったナシウスが言ったが…。
「いえいえ、それは皆知ってるんですよ。
ハイネさんのネコ人なんとかで…。
皆が気にかけてるのはグレイが元気かどうか、です。
……ところで犬って…」
ついグレイを“犬”と言ってしまい、それを突っ込まれた彼は焦る。
「いやいや、そっ…そうだ今は狼だったなぁっ!
ま、まあそれより…つまり僕にグレイの様子を見に行って欲しいってことかい?」
「はい、洞窟は僕らが行くにはかなり大変な場所なので…それに、お父さんが遭難してる所をグレイに助けられたって」
「へぇ…人々に恐れられた氷狼が今ではサムラの住人に愛されている、と…。
分かった、彼に会って来よう。
……そういうことも兼ねて放浪してるんだし…寧ろ是非やらせて下さい」
「ありがとうございます……気をつけて!」


そういう訳でグレイに会ったナシウスは、彼と戯れる内に寒さによる眠気に襲われ……5時間近く寝てしまった。
「ありがとな…添い寝してくれて」
グレイが添い寝して、冷気から彼の身を守ってくれたらしい。
迷い込んだ者にもこうしてやるのだろう。
「クゥン…」
頭を撫でられ、嬉しそうな様子のグレイ。
おぞましい風貌に見合わぬ甘え鳴きをした。
「……やっぱり根は犬だなぁ…」
その滑稽さにナシウスが苦笑する。
「さて、5時間もあの子を待たせたからね…早急に戻らないと」
別れ際にもう一度グレイを撫で、それから大氷河穴を出た。



ナシウスは無事少年へ報告し、ナナシ城に赴く。
当然ながら少年にかなり心配をかけていたが。
「………」
彼は霊化し浮遊して帰路についた。
そしてふと、大氷河穴で見た“夢”が気掛かりとなる。

それは…“底知れぬ闇”であった頃の自分が、ジャボーの肉体への完全憑依に成功し、オリバー達と激闘を繰り広げる夢。
簡単に言えば、現実でジャボーに阻止された肉体への完全憑依…それが成功していたらどうなっていたか、と言った内容だ。

夢にしては妙に生々しく鮮明で、脳裏に強く焼き付いている。
ナシウスはその理由を考え…一つの答えを見つけた。
「“魔導王の口”……」
“魔導王の口”とは大氷河穴の別名で、あの空間にあらゆるものを吸い込み封じる強大な魔力がある…ということからそう呼ばれる。
それには“時間”も含まれ、入った者に過去の情景を見せることもあるらしい。
「僕の場合、もう一つの“未来”を見せられたか……夢にまで影響するとは恐ろしいね」
そう考えれば、あの夢が生々しく鮮明であった理由も納得がいく。
自分は夢を見たのではなく、“選ばれなかった未来の疑似体験をさせられた”のだから。

それにしても、意外で驚くことばかりだった。

彼は夢をそう振り返る。
現実では引き出せなかったオリバー達とジャボーの意志。

そして戦いの果ての、ジャボーと一体化して自我を消すという己の選択。

“自我を持って今の世界を見たい”
という思いは、ジャボーと一体化して“自分のいない間に彼は何を見たか”知ってから芽生えたもので…それが強まったのはナナシ城前でオリバー達と一戦交えてからのこと。
故に、夢での自分の選択はごく自然なものなのだが……。
「……らしくない」
過去の自分を“らしくない”というのも妙な話だが、夢の自分…影が最期に見せた笑顔はらしくないと思ったのだ。
あれだけ狂気と絶望を抱えていた自分が…最期にあんな良い笑顔を見せるとは。
あの時の自分なら、皮肉の一つでも遺しそうなものだが…。
「…あ、そっか」
考える内に、もしかしたら…という理由を見つけた。

夢のジャボーは、あえて夢の自分に冷徹な態度をとった。
その真意を読み取れなかった自分は拒絶されたと思い込み……。

「アイツがまだ自分を助ける気だったなんて、思いも寄らなかったんだね」
“閉じた心”は痛みを感じない…だが温もりには弱かった。
それで、あそこまで素直な態度になったのだろうか。
「……あぁ、それを言えばアイツも“らしくない”顔してた…」
そう言ったあと、ナシウスは笑った。


どっちにしろ、ジャボーはあんな自分を見捨てないでくれた…ということではないか。





「おっ、居たんだ」
「あぁ…お前か」
「…相変わらず素っ気ないなぁ……」

ナナシ城周辺…浄化された“死者の湖”の崖にジャボーは佇んでいた。
そこはちょうど彼が百年程前に訪れ……身投げした場所。
やはり、彼にとって思い入れのある所らしい。
「巡り巡って…まさか此処が憩いの場になるとはねぇ」
ナシウスはジャボーの隣に行き実体化した。

死者の湖は濃霧が漂う毒沼で、悪霊が訪れた者を死に誘う……いわゆる自殺の名所。
だが、今は大きくその姿を変え…青空を映す済んだ水面や、生命を育む広大な緑を持っている。

「訪れた者の心を癒やし……同時に、美しさゆえ自殺を促す場ともなった」
「…で、そんな自殺者を引き止めてるのが君か」
「それも“償い”の一つと考えたのでな。
……自ら命を絶つ、それ以外の道を示すだけだ」
ジャボーは水面を見つめて語った。
「何せ、レカ大陸北部は“ジャボーのお膝元”だったからね。
君の目も隅々まで届く訳だ…現に自殺者も激減したし」
「私の“償い”は此処だけに留まらないがな……」
そう…果たさねばならないことは、もたらしてきた災厄の数だけある。

「…なら、世界をうろうろして、君に見えない所まで解決するのが僕の役目さ」

ナシウスも当然、ジャボーの覚悟を理解しており……彼も同等に覚悟していた。
「案ずるな…独りで世界を変えるのは慣れている。
…お前はやりたいことをすれば良い」
「……“罪を背負うのは私だけで良い”って?
何言ってるんだか、これがやりたいことだよ。
文字通り僕らは“二人で一つ”だ…つまり、僕には罪を半分背負う権利がある!」
「権利だと……妙なことを言うな…」
ジャボーは、弾のごとく言葉を飛ばされ呆れる。
「…大体それを言うなら…──────────」
そう言って突如ナシウスが消え……。

「ブフォアッッ!?」
「君は出したい表情を出せば良いっ!!」

背後からジャボーをくすぐった。
完全に隙を突かれた彼は盛大に吹き出してしまう。
「…キッ…サマ……何をす…っ……」
笑いを漏らしつつ必死に抵抗するジャボー。
しかし、器用に両手を動かすナシウスは厄介だった。
「仏頂面で回りくどい言い方して…だからいつまでも“心を取り戻せ”ってヌケガラビト扱いされるのさ!」
「百年いじょっ……癖を…急っ……治せ…筈……っ」
“百年以上もの癖を急に治せる筈がない”
ジャボーはそう言ったが、酸欠となりかけ声が掠れている。
そんな彼も、ようやくナシウスの右腕を掴むと、そこに軽度の電流を流した。
「うぐっ…クソ…」
よろけて倒れ込むナシウス。

「…真剣な話をして……唐突にそれか……」
息を整えると、ジャボーは涙の滲む眼で彼を睨み付けた。
「へへんっ…流石にアレで無表情は無理だろ?
とにかくもっと力を抜きなよ。
……あんな良い顔で笑えたんだから…あの娘だってきっと………」
瞬時に痺れの取れたナシウスが言うと、ジャボーは怪訝な顔をする。
「…何の話だ?」
「……夢の中での話」
かなり拍子抜けした。
夢の中での話を現実に持ち出すとは…。

一体化すれば、彼らは互いの記憶を共有できるが…唯一、互いに見た夢だけは知ることが出来ない。
その由縁は、単にどちらの記憶にも残らないためか……あるいは、ナシウスの新たな器となった“魂の抜け殻”の悪戯か。



親友とも、親子とも、兄弟とも、双子とも、似て非なる奇妙な関係の魔導士と心霊。
だが…二ノ国はそんな彼らすら受け入れ、今日も今日とて豊かな表情を見せる。
その表情は、やはり奪うべきではないのだ…と、ナシウスは改めて実感を覚えるのだった。

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          ~ALL END~



(ここまでお目通しありがとうごさいました<(_ _)>)

【二ノ国小説】part19「熱い掌、融解する心」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

遂に筆者も受験生…勉強に力を入れるのは勿論、年齢的に自立も出来るようにしていきたいですね。

さて、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。

影は魔物化し、オリバー君達はそれを迎え撃ち…
人間の心を巡って力がぶつかり合おうとする。

では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神




「…済まない」
「えっ…?」

突然ジャボーがそう言い、思わず彼を見るオリバー。
「奴を真に打ち負かすには、私がその全てを否定する必要があった。
我が心の闇……その居場所はこの私の他にありはしないのだから」
「だからアイツは…あそこまで…」
目の前で、影は怒り狂ったように力を開放していた。

長年彼の中に巣くっていた心の闇。
誕生の理由は、限界を越え崩れる心を保つため…言わば、居場所を失ったナシウスが自らの中に創り出した唯一の居場所だ。
ナシウスは“ジャボー”となってこの“底知れぬ闇”と共生し、それ故いくら傷付いても限界を感じない心を手にした……そのつもりだった。
しかしやがて彼は悟る。
自分は心を麻痺させ、騙して強引に保たせているに過ぎず…そこに自分の本心は無い、と。
こうして“底知れぬ闇”は居場所でなくなり、その存在意義を全否定され今に至る。

「だが、そのせいでお前達を更に苦しめ…─────」
ジャボーはオリバーの手を引いて瞬間移動した。
影の巨大な右腕に襲われかけたのである。
「二人とも…大丈夫!?」
移動先はレイナスの側であった。
「僕達は大丈夫…ありがとう、ジャボー」
突然の瞬間移動に、驚きつつも微笑むオリバー。
そして彼はジャボーと繋がる右手を見る。

「…むしろ嬉しいよ。
僕達もレイナスも…君も…ここまで分かり合えるんだって分かったから」

オリバーにそう言われ、ジャボーも手元に目を落としてハッとした。
瞬間移動しなければ避けきれないと判断し、とっさに彼の手を引いたのだが…思えば自ら人の手を引くことなど、百年以上も無かった。
先程の自分に驚くと同時に胸をくすぐられるような心情になるが、不思議と離す気にならない。
「これだけの恩恵を受けたのだ……見過ごす訳にはいかぬだろう…」
そう言って笑顔の彼から視線を逸らす。

この純粋無垢な感謝の笑顔…まだ、それを受け止めきれるほど素直になれない。

「僕は沢山の人、そして貴方にも助けてもらったんだ……だから、僕も貴方を助けたい。
それぐらいしか僕には出来ないから」
「っ……」
己が生み出した影は、自分一人で消さなくてはならない。
そんな自責の念も和らぎ……この言葉で彼は影に何をすべきか悟った。

「…お前達には感謝もしきれない……お陰で奴との葛藤も終わりが近付いたようだ!」

静かにオリバーと繋いだ右手を離し、影に向けその手から蒼炎を放つ。
胸部の黒い球は肋骨に守られている上かなりの再生力を持つので、オリバーとレイナスが持つ光魔法の他に破壊出来る力はないが…それも肋骨が開けばの話である。
「まずは奴の攻撃手段を封じる…!」
ならば、あの巨大な腕を使用不可にするのが先決であろう。
蒼炎は影の右腕に当たり、僅かながらそれを焦がした。
「奴は胸部を守りつつ我らを相手にすることとなる…単純に胸部を狙えば返り討ちに遭う筈だ」
「攻撃手段さえ封じれば、あの肋骨の破壊に専念出来ると……そういうことですか!」
影がジャボーの魔法で怯む隙に、 今度はエビルナイトが左腕へ大剣を振り下ろした。
頑丈な腕にも傷が刻まれている。

「…成る程な、大体話が読めてきたぜ……。
今度こそ俺の銃の本領発揮だな!」
その様子を見たジャイロが弾を撃ち…─────
「まずはひたすら両腕を攻撃…非常にやりやすいですね!」
ラースも続いて“衝撃波”を発動し、彼を筆頭にして次々と全員が攻撃していった。


影の攻撃は、オリバー達の想定通り両腕を使うものが殆どであった。
右腕から強大な光線“冥界の光”を、左腕からは状態異常を引き起こす特殊な光線“残光の闇”を放ち…魔力を地面から衝撃波として放出する“漆黒の衝動”も使う。
威力の差はあれど、魔物化したジャボーと行動は変わらない…そう思われたが。
「グッ…ヴウウウウゥ……」
怒涛の攻撃と両腕の痛みで反撃も出来なくなっていき、耐えて呻くことしか出来なくなった頃…。

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

突如、全身から魔力を放出した。
「きゃっ…何!?」
「アカン、アカンッ!」
マルとシズク含む彼らはすぐさま防御態勢を取り、その直後……両腕と口腔から三方向に極太の光線が放たれる。

「うぅ…強い……」
「…しかし奴の隙も見えた」
「どういうこと…?」
オリバー達は防御し、ジャボーは瞬間移動をしたためどうにか無事である。
そんなジャボーにも気付いたことがあったらしい。
「あの光線を放った時……あの瞬間だけ肋骨が開いた。
攻撃に意識を注いで胸部の防御を怠ったか…」
「だけどよ…あんなに光線撃たれちゃとても球なんか狙えねぇぞ!?」
「そこで両腕を破壊して、光線を一方向にする…でしょ?」
疑問をぶつけるジャイロに、マルが言葉を付け足す。
「…察しが良いな、賢者の娘は」
「でしょ~!?」
「お、俺だってんな事気付いてたぞ!?
いちおう俺も賢者の息子だからな!?」
ジャボーが感心する様子を見てすぐさま付け足すジャイロ。
だが、影に視線を戻すと表情を一変させた。
「アイツの両腕はもうボロボロだ。
もうひと踏ん張り…今の内に両腕を壊すか!」
自らの攻撃の反動で動きを止めている影。
そこにも容赦なく彼らは攻撃し続けた。
長らく攻め続け、遂に…────────

「ギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

程なくして、悲鳴と共に消え失せる両腕。
「良し…あとは肋骨ですね!」
ラースが息をついて言う。
今はこちらが優勢で、影が光線を吐き出すまで待機…という選択肢も取れる。
しかし黒い球が一発で破壊出来るとは思えないので、肋骨も破壊する手を選んだ。



ひたすら肋骨を攻撃し、光線を吐き出される直前に隙あらば光魔法を打ち込んで怯ませ…それを繰り返していく。
頑丈で厄介な腕を破壊すれば、かなり優位に立てる相手である。

一方、影は内心焦っていた。
黒い球の中にある本体は、魔物化した影にとって心臓であり脳でもある。
そこへ触手が神経や脈のように繋がれており、人型をしておりながら臓器そのものと化していた。
そんな本体は理解不能、といった表情を浮かべる。


オリバー達を追い詰める気でいたのに、自分の方がこれほど追い詰められている。
弱点を突かれたから?
…それだけではない、精神までも追い詰められた。
ジャボーの裏切りの後もなお、彼らに心をかき乱される。
というよりは彼らの“心”に。
目に映る彼らの心は、美しく光り輝いていた。
同時にとてつもなく熱い。
そんな中で生まれた一つの強い疑問……。
何故、傷付いたジャボーの心までも…──────

そう考えた時、目の前が白く染まった。


「やっと…壊せた…」
グラディオンとミーティアライトで半壊した球を見て、オリバーとレイナスが息をつく。
「せやけどまだアイツは……」
「いいえ、ここからはジャボーに任せましょう」
レイナスがシズクの言葉を遮った。
そして、彼女は球を見る。
「…彼には彼の考えがあるようですよ」
「あっ…アイツいつの間に!?」
シズクも同じ方を見ると、球の中に乗り込むジャボーが見えた。



影の目の前にジャボーが現れ、ずかずかと球の中に入り込んでくる…同時に心の中にも……。
「…あはは…はひゃひゃ……私はもう…完全に負けたのか…」
乾いた笑いを漏らす影。
…笑うしかない、と言った方が的確だろう。
「女王陛下もお前も…揃って今さら善人面か。
お前達に消された命も心も還って来ない……。
増してやそんなお前達が、あの少年のような英雄になどなれる筈……」
「そんなことは百も承知…だから繰り返さぬと決めた」
影の抵抗は、非力にもジャボーを止められない。
「!?」
突如彼に右手を掴まれ…その瞬間、彼の心が直接流れ込んできた。
「…うぁ……あ…」
影の体が震え出す。

どうしようもなくジャボーの手が熱い。
本来ならば、不死者ゆえ常人より冷たい筈…まさか、これは読心できるから感じる熱か?
否、おそらくヒトなら皆感じられるのだろう。
感じようとするか否かの違いだけで…───────

「こんな真似が出来るとは…私自身も驚いている」
ジャボーが影を見つめて言った。
「……教えてくれ…。
何故お前は…深く傷付いたお前の心は……そこまで熱く輝いていられる…!?」
問いに対し、ジャボーは溜め息混じりに答えた。
「傷付いたから、だろうな…。
“痛み”に耐えることだけが強さではないと……奴らに教えられた」
「…そんなことを言われても…私には分からない……」
「それもそうだろう…お前は他者に頼ることも知らないのだから」
「………。
…私を消さなくて良いのか…?」
ジャボーは手を引いてまた答える。
「そんな真似をせずとも、私は再びお前を受け入れる。
お前の居場所は……私の他にないのだから」
「っ……!」
思わず影は顔を上げた。
目から再び液体が流れている…ただし、今度は透明な涙。
それを見て目を丸くするジャボーに影は言った。

「…眩しすぎるんですよっ……お前達の心は…。
私には眩しくて熱すぎる……!」

一瞬笑ったと思うと、ジャボーは球の中から影を連れ出す。


彼の影に対する決断…それは、オリバーの手を引いたことから決まる。
あの時に感じた温もりを、暗く冷たい“底知れぬ闇”に届かせたい…今の自分なら出来ると思った。
「まずは外界を見せてやろう。
存外居心地の良い場所だぞ……“底知れぬ闇”の中より遥かにな」
その言葉を聞いて影も言った。

「そう言えば……私も今の“二ノ国”を殆ど見ていない…否、見ようとしていませんでした…。
……なら見せてもらいましょうか…お前の中から…─────」

今までとまるで違う、優しく暖かい笑みを浮かべたかと思うと…影も巨大な骸骨も、光の粉となりジャボーに取り込まれるのだった。


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             ~END~

【二ノ国小説】part18「人間のための絶望郷」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

いやぁ…もう学年アップシーズンとは…。
良くも悪くもクラス換えにドキドキする時期でもありますが、私は固定クラスにいるので その心配はなさそうです((どーでもいい

さて、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。

闇を操れども心は闇にあらず…という感じになったジャボーさん。
彼から完全に拒絶された影は果たしてどう出るか。

では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神




「ジャボー…」
「…バッサリ言い切りよった……。
せやけどよう言ったで!」

オリバーとシズクはジャボーの背を見つめ直す。
影から解放され、翼や白大蛇の消えたそれは清々としており…彼の心中を体現していた。

「エビル」
「!」

影への拘束を強めたままエビルナイトを呼ぶジャボー。
すかさずエビルナイトが彼の隣に行き、横目で顔を覗き見た。
「…辛い思いをさせて……済まなかった」
ジャボーは視線を影に固定したまま、隣の肩に右手を置く。
感情の読めない真顔だが僅かに曇りが見られ、そこから反省の気持ちが伝わってきた。
それに対する騎士の答えは…──────

「我らは人間の矛にして盾だ。
主の代わりに力を振るい、苦痛を引き受け…… その中で主と心を通わせる。
それが人の心から生まれた我らの務めと思っています」

意外な言葉にジャボーは目を丸くした。
その様子を見て微笑し、続けて話す。
「…主がこうして戻って来れたなら充分。
貴方のためなら…身を切られようと悔いはありませんとも」
言葉を噛み締め、目を細めるジャボー。
純粋無垢なその言葉に胸を締め付けられそうだ。
「良くやってくれた…後はその身を休めていろ…」

エビルナイトの傷は癒えている。
だがこれ以上の無茶はさせられない。

そう思い彼なりに労いの言葉を掛けたのだが…。
「私はもう大丈夫ですよ…今度は何の迷いもなく戦える」
その心配も無用であった。

「……ならば、今少しだけ力を貸してくれるか」
「…御意」

彼らは意を決して再び影を見る。
二人の表情には一点の曇りも見られない。



「ぁはははははっ…はひゃはははははは」

「チッ…しぶてぇ野郎だな」
影の笑い声を聞き、ジャイロが苛立ちを見せる。
「ふふ、私は“底知れぬ闇”ですよ?
人間とは別に考えて頂きたい」
影がゆっくりと顔を上げ……。


その顔を見た時、オリバー達は戦慄した。


「しかし、ナシウスが発したこの氷の棘はかなり効きましたよ。
……厳密には鮮明な“拒絶の意思表示”がですかねぇ…」

くり抜かれたように見える黒い両目は、おおよそ人間の目とは思えない。
もはや両目というより二つの穴に見える。
その中心で、赤い瞳が彼らに向かい光っていた。

「女王陛下の魔法はナシウスのそれより強大…故に当然そちらの方が深く体を傷付けられた。
だが、私が感じる“痛み”は魔法の威力に左右されない……神経“だけ”に伝わる苦痛などで怯みはしないのです。
…だからこそ……我が本体であるナシウスからの裏切り…それは耐え難いものだった……」
影が語っていくうちに、体液とも涙とも伺い知れない液体が零れだす。
ボタボタと地面に落ちるそれはどす黒い……影自身を表すかのごとく。
「自分に裏切られることがどれほど痛いか分かりますか…?
いくら閉じた心を持ち、外界から隔離しようと……防ぎようのない“痛み”なのです。
だから心など無い方が良い、と言っているのに……お前達は……… 」
言いつつ左腕の棘を強引に引き抜き、腕を上空に向けて伸ばす影。
「心をわざわざ痛めつけ、それに耐えろと?
…この世から“痛み”を無くそうとは…微塵も思わないのですね……ならば!」

腕の先から触手の波が溢れ出た。

「その体を一切動けなくなるまで痛めつけ、お前達の心を消し去ってやるだけだ! 」
触手は褶曲して影を覆っていく。
「はひゃはははは…抜かりましたねぇナシウス!?
“キメラ”の力を手放したのがお前の誤算…その力はこちらに残された!!」
「なっ…!?」
消えたと思っていた魔法“キメラ”が残る事実に驚くオリバー達。
そんな中でジャボーが言い放つ。
「私にはそんな力など必要ない。
人間と他の生物を融合させ、心を消し……生まれるモノはそれでも“人間”か? 」
彼の言葉を聞いたオリバーも、少し考えた後に言った。
「…確かに、人間が悲しんだり傷付いたりするのは心があるから……そのせいで間違った方向に進むこともある。
……でも…─────── 」
言葉を切ると同時に輝きを増す青の瞳。


「僕が……いや、“皆”がここまで進んで来れたのは心があったからだ!!」


「…せ、せやっ!心が消えたら善悪の区別も付かなくなるがな!!」
シズクは脚に力を入れて影を指差し、付け足すように怒鳴った。

「それが何ですかぁ!?」
「ぅひっ…!?」

変化した両目でオリバー達を睨みつける影。
その形相にシズクは思わず畏縮した。

「人間か否か?心から得られる利益?善悪の区別?
そんなものは全て無意味だ!!
どれも所詮…人が作り出した概念の一つに過ぎないのだから!
今ある概念など私が残さず葬るだけ……“人間”という枠組みに捕らわれて進化が成せるものかっ!!」
声と共に触手が勢いを増し、増幅したそれは影を中心に球を生成していく。

「こっちの言い分なんざ知ったこっちゃねぇ…てか」
「ええ、説き伏せるのは不可能…ならば止める術はただ一つ」
ラースが目を鋭くして杖を構えた。
「おうよ…あっちがその気なら出し惜しみは無用だぜ!」
弟の言葉を引き継ぎ、銃を構えるジャイロ。
「皆やる気みたいだね…勿論、私もだけど!」
「…私とて同じです……私もまた、こうやって妄想に打ち勝ったのですから!」
マルとレイナスも身構えた。

「これは人間を愛してこその決断だ…人間が永久の平和と幸福を望んだが故の。
私はそれに応えてみせるとも…完全無欠な、生きとし生ける者のための“理想郷”……否、人間のための“絶望郷”を築くことで!」

完全に黒い球と化した触手の塊。
影が収まっているそれの両側から極太の触手が伸びる。
触手は分岐し、絡み合い硬化しながら巨大な右腕を、左腕を、頭部を生成し…──────

「おっ…おいでなすったな!?」
若干怯みつつもジャイロは気を保つ。

変貌した影は巨大な人骨のようであった。
ただし人骨と異なる部分も多数見られる。
頭部と両肩から生えた角、鋭利な爪を持つ巨大な掌…それはどことなく魔物化したジャボーを想起させた。
あれが白骨化すれば、まさしくこの様になるだろう。
そして肝心の黒い球は胸部に引っ付き、昆虫の脚にも見える肋骨に守られていた。

「ヴゴア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

「きゃっ!?」
影の咆哮が空気を激しく震わせ、治まった頃には…。
「な、何やコレはっ!?」
「景色が…変わった…!? 」
シズクとラース含む全員が戸惑う。
先程まで周囲に岩壁がそびえる崖に居たのだが、今は辺り一面が荒れ狂う紅い海と化していた。
そして驚くことに、彼らの足元さえも水面に変わっている。
「これは…大規模な幻覚だ」
「幻覚ぅ!?
……どうりで足元の水流を感じねぇと思ったぜ」
ジャイロが濡れない足元を眺め呟いた。
ジャボーがいち早く幻覚と見抜いたのは、幻覚でアルテナの兵士達を絶望へ貶めたという…彼自身の過去に基づいたために他ならない。

「…己の心情でも表したか……悪趣味だな」
「お前が言うなやっ!」
真剣な趣で言う彼へ、反射的に突っ込みを入れるシズク。
その後に驚いたように言った。
「しっかしあの骸骨といいこの幻覚といい……
でかくなったジャボーと女王が可愛く思えるわ!!」
「……可愛い…かな?」
考え込むマルを見てシズクは跳ねた。
「言葉のあやで言うてんねんっ!」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」
「お、おう済まんかった!」
彼はオリバーの声で平静を取り戻す。


「…心を無くすなんてやっぱり間違ってる……。
絶対にそんなことはさせないっ!!」

魔物化した影との戦いが始まるのだった。


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            ~END~

【二ノ国小説】part17「私の躯はそのために」【※ks&グロ注意】

皆さんこんばんちは(*・ω・)ノ

今冬から急に降雪が増えましたね……。
しばらく降らなかった分まとめて降ってきたかのようでした(´・ω・`)
…と思ったら次は花粉かよおおお((黙

さて、この小説にはグロ表現・鬱描写が含まれておりますので閲覧の際は気を付けて下さい。

心を完全に閉ざすと決意したジャボーさんだったが…
それはオリバー一行に敗れて以降どうなっているのか?

では今回も…ゆっくりしていってね! ───────────────────────

二ノ国 magical another world

精神融裂~モノクローム絶対神








~ゴーストの谷・最奥(現在)~




「…これで……良かったんだ…」
エビルナイトは、影の腹部から大剣を引き抜いて自分に言い聞かせる。
こうしなければ、平静を保てなくなりそうだ。

「ぬっ…ぐぅうっ……」
一方影は己が支配したその身を震わせた。
苦痛の中で彼は確信する。

もう、この肉体は制御できない。

「ぐおおおおおおぉぉっ!!!」

頭を抱えつつ絶叫すると、全身から漆黒の気体が噴出した。
この気体こそが影の本体…“心の闇”である。

「ジャ…ジャボー……!?」
レイナスは戸惑いつつも声を出した。

パタリと全身の力を抜き、沈黙するジャボー。
その姿は彼本来のものに戻り、レイナスの胸部へ刺さったトライデントも消えている。

だが一向に目覚める気配がない。

「ジャボー!しっかりして…ジャボー!!」
麻痺も回復してきたか、彼女は上半身を起こしてジャボーの肩を揺らした。

共に償っていくと決めたのだ。
そして彼自身に対し償いたいこともある……
こんな形で別れたくはない。

「ジャボー様……」
エビルナイトも彼の側に跪き、その身を抱きかかえる。
ジャボーの体は想像以上に軽く…何だか悲しく思えた。
「エビルナイト…ジャボーをこっちに!」
オリバーに言われ、彼を優しくオリバーの元に置く。
「ありがとう…!」

レイナスもこっちに…!」
「あっ…はい!」
マルの声に導かれ、ふらつきつつレイナスは彼女に寄った。
「このくらいの傷なら…私の歌でも完治できる筈」
ハープの弦を弾き、“チアリーソング”を歌い上げる。
「ありがとうございます…」
レイナスが持つ胸元の傷は癒え、赤く染まった傷口周辺の布も漂白された。
出来ることならジャボーにも使用したかったが、彼の傷を歌で完治させるのは難しく、マルにもかなり負担がかかる。
故に、彼を癒やすつもりのオリバーへ任せることにした。


白大蛇から開放された一行が、横たわる彼に寄り添った。
「今度こそ元に…戻ったんだよね…?」
「ええ、おそらく……」
おそるおそる覗き込むマルとラース。
「お、おい…このままじゃ…いくらコイツでもヤバそうだぞ!?」
「せ…せやせやっ!
止めるためとは言えどてっ腹ぶち抜かれたんやし!」
ジャイロとシズクが、ジャボーの腹部を見て慌てた。
そこには背から腹にかけて傷があり、地面を赤く染めるほど体液を零している。
「大丈夫…絶対に僕が連れ戻すから!」
言いつつオリバーは“ヒールオール”のルーンを描き出した。
「…母さんは…ジャボーに償う時間をくれた。
そしてジャボーも必死に償おうとしてる…
二人の気持ちを無駄にはしない!!」


「よくも……私の体をおおおぉっ!!」

「うわぁっ!?」
「オリバー!?」
突如触手に襲われ、彼の魔法は中断される。
「何や何やぁっ!?」
全員が触手の飛んできた方向を見た。

「そんな…アイツ、まだ戦えるの!?」
目を見開くマル。

その先で一点に留まる黒い気体。
気体はどうにか人の形を保っていた。
更にその左腕から、おびただしい数の触手が。
「このっ…!!」
ジャイロはそれを銃で撃つ。
しかし…
「……効くものか。今の私は肉体を持たぬ」
気体を貫通はしたが…効いた様子はない。
そして、気体…影の頭部から人間らしい顔が現れた。
ただし、先程ジャボーに憑依した時に負傷した右目…そこは気体のまま。
「ならば…!」
今度はレイナスが“マジックアロー”を放つ。
強力な魔法の矢…それは見事に影を貫いたが。
「ぐっ…流石は女王陛下……。
…だが、この程度の“痛み”で私は怯みません」
「何ですって…!?」
一瞬顔を歪めただけで、触手を戻すことはない。

やはり、彼を止められるのは…──────

「その代わり…著しく魔力を失いましたがね」
影は笑いつつも口惜しげにジャボーを見る。

彼の肉体から得た魔力は強大で…
しかも、元は一つだったため完全に使いこなすことが出来たのだ。
その肉体を手放すのは、かなり惜しいことだろう。

「だから私は新たな器を手に入れる。
次はその男の“対”にして更なる魔力を持つ……お前だ」
「う…ぐ…」
影は、触手に侵食されるオリバーを見た。
触手は彼の皮膚と一体化し…そこから少しずつ彼を黒く染めていく。
見かねたエビルナイトとルッチが、全力で剣を触手に下ろした。
「っ……堅いっ…!!」
「…チィッ!
さっきの球体みてーに何本も集まったからか!?」
一連の様子を見届けた影が彼らを嘲笑する。
「ふふ、アナタ方に私は止められない。
それにね……その少年から触手を外せば、彼の命も危ういんですよ」
「何だとぉ!?どういうことだ!?」
影は憤るジャイロに答えた。
「今の彼は私と繋がった状態です…触手によって。
それは“一ノ国”と“二ノ国”とを繋ぐ“魂の絆”の様だ。
言わば、この触手は別世界の二人が共有する魂と同じ。
……その魂を消せば…二人はどうなります?」
「テメェ…俺達を脅してやがるのか!?」
ジャイロは影を睨みつける。
だが、一切笑顔を絶やさない影。
「まさか……。
…とは言え、私は“魂の絆”はおろかナシウスの肉体からも切り離された霊体。
消えるのはその少年のみです」
「そんな…」
マルが表情を曇らせた。
後に続き、同様の反応を見せる仲間達。
「…せやけどっ!!
はよせんとオリバーがアイツに取り憑かれてまうでえぇっ!!?」
言いつつオリバーを見た直後、飛び上がってシズクは彼に駆け寄った。
「わあぁあああああぁっ!?うわわああぁぁっ!!?
アアアアカンアカンアカンアカンアカンッ!!
オリバーが真っ黒にいいいいいいぃぃっっ!!!!
しっかりせぇやオリバーッ!!!オリバアアァァ!!」
しかし、オリバーは必死の呼びかけにも答えない。
「オ、オリバーッ!!そんなっ…嫌だよっ、ねぇ!?」
「クソッ…ちくしょおおぉ!!」
「くっ…オリバー……!!」
「オリバーまで…そんな……」
マル達は慌てふためいた。
そして…オリバーを救う手立てが無いことを悔やむ。

危機に瀕したオリバーとジャボー…二つの魂。
ジャボーが“魂の絆”を断ち切り、互いに独立した二人だが……
今の彼らは未だに繋がっているかのごとく、同等に追い詰められていた。

「指をくわえて見る他ないとは……さぞかし己の無力さをお恨みなさるのでしょうね」
「言うなや自分っ!!
このっっ……アホンダラァッ!!!」
シズクは、影へ本気の怒りをぶつける。
されど笑う影。
「…精一杯わめき散らせば良いさ。
お前達がどう足掻こうと……間もなく救世主は私の器です」


「…思い上がるな……」
「!?」
声が聞こえた直後、影の触手が発光した。

「うあ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁっ!!!」
雷鳴と共に発光し、絶叫する影。

「ひゃあ゛あ゛あ゛あああぁぁぁっ!!!?」
そして突然の雷鳴と発光に驚き、シズクも悲鳴を上げた。
「なっ…何!?」
マル達も騒然とする。
その後触手が消滅し…オリバーは解放された。
「…オリバー!」
「うぅ……みんな…?」
「みんな…?…やないでぇ!!
お前が真っっ黒になりよって俺らの声にも答えへんからごっつ心配したんやぞっ!?」
「そ、そーだ!俺達マジで泣きそうだったぜ……も、文句あっかぁ!?」
半ベソをかいて話すシズクとジャイロ。
「…でも良かったぁ……」
頬を染めたマルが涙を拭って微笑んだ。
「ご無事で何より……」
ラースとレイナスも優しく微笑む。
そんな仲間達へオリバーは笑い返した。
「みんな…ごめんね」
しかしその直後、彼の脳裏に疑問が浮かんだ。
「…でも、一体誰が僕を……」
仲間に気を取られていたが、今になってその向こう側の世界に気が向く。

こうしてやっと目に付いたその背中。

「ジャ…ジャボー!?」
「えっ…!?」
オリバーのことで頭が埋め尽くされていたマル達も、自分達の背後…オリバーの正面を見る。
「い、いつの間に目覚めとったんか…!?」

オリバーを庇うように背を向け、影を見据えるジャボー。
彼は先程目覚め、触手に絡み付かれる少年を見た。

すぐにその状況を理解できた。
己も全く同じ目に遭ったから。

こうして這うように触手の束へ近付き、左手で杖を掴み右手で束を握り締め…“闇の雷撃”は触手を伝って影に直撃したのである。

「……ガホッ!!」

突如ジャボーは大量に吐血し、その場で崩れた。
「ジャボー様…!?」
「お、おいっ!?」
オリバー達が慌てて側に駆け寄る。
「今治すから…じっとしてて!」
オリバーが杖を掲げた。
しかし、震える手のひらがそれを制止する。
「…情けなど……かけることはない……」
「で、でも!」
 「私が一人で…奴を止めるべくしてしたことだ…」
目を細め、かすれた声で語るジャボー。
「過去の私を…消し去れるのは……現在の私の他にいない…。
そして過去の己が…現在を消し去るつもりなら……私は過去と共に消えるのみ…」
彼は再び咳き込んだ後に続けた。
「……お前のその体も…灰が染み付いたこの体も…奴の“器”などではない。
現に…その体は…お前の意志と共に歩んで来た筈……。
ならば私も…─────」
「おいおい、無理に喋らんときや自分!
つまらん意地張っとらんで大人しくしとったらええねん!」
「“意地”などではない…“決断”だ……。
今の奴なら…並の攻撃は効かずとも、お前の杖が放つ光は通用する。
そして私自身の灰を浄化すれば……完全に奴は消え去る筈だ…」
「そ、そんな…貴方に“ホーリー”をかけろと言うの!?
駄目です…そしたら貴方が消えてしまう!」
レイナスが反論した。
心の一部であるココルと一体化を遂げ、自ら会得した禁断の魔法“聖灰”を浄化する魔法“ホーリー”を彼女から得ている。
「それは…どういうことですか…!?」
ラースがその言葉に対し疑問をぶつけると、レイナスは哀しげに目を伏せ答えた。
「私が“聖灰”を降らせたあの時…もう1人の私が持つ“ホーリー”で、人々は綺麗に元通りとなりました。
ですがジャボーはその人々と違う……灰をはびこらせた年月が長すぎたのです」
「…ええ、肉体の方も…最早慣れてしまいましたとも……」
彼女の言葉をジャボーが引き継ぐ。
「故に…私と灰を完全に分かつことは不可能。
それでも女王陛下は我がために、出来る限り灰を取り除いて下さった……私が消えぬ程度にな。
…だが、もう良い……。
私は奴と…血迷っていた愚かな自分と共に消える。
二度と奴を生み出すことのないように……
それこそがせめてもの償い…────」

「んなことしか思い付かねぇとか…アンタも大馬鹿だな」

「…なっ!?」
「兄さん…!?」
驚くジャボーとラースを尻目に、ジャイロが呆れた様子で続けた。
「ったく……何つーか…見た目の割にオリバーと似通ってんだな、色々。
今更持ち出すのも未練たらしいと思ったが…しゃーない、吐いちまうか」
そう言った直後、彼の声や表情が急変する。
「…アンタの過去や本当の願い……オリバーを通してだが確かに伝わったし、心底同情するよ。
だが…こっちにゃそれでも譲れねぇもんがあるのさ。
今のアンタなら……分かるな?」
「兄さん…まさか」
真剣な兄の口調で、ラースはその言わんとすることを察したようだった。
「……ああ…」
ジャボーも観念したように目を伏せる。
二人の様子を見届け、ジャイロは再び語った。
「…そう、先代皇帝のことだ。
あれに関しては……どんな訳があろうと安々許せるもんじゃない。
だからアンタにはきっちり償ってもらうぜ」
「ジャイロ…」
マル達も深刻そうな表情を浮かべる。
無論、先代皇帝…ジャイロとラースの父親を手にかけたジャボーも例外ではない。
寧ろ誰より深刻な表情と声を持って答えた。
「十分に承知している…
これより行うことも、百年もの罪を償いたいがためのこと……」
「だぁかぁら、そこが大馬鹿だっつーんだよ!」
「…!?」
言葉の調子を戻すジャイロ。
「散々世界を狂わせた挙げ句に“二度と過ちを犯さないため死んで償います~”…ってか?
随分と身勝手な“償い”だなぁ!
誰も得しねぇし無責任なこった!」
「っ……私が蘇った時と今回は違う…。
私の心より生まれし闇を…葬らねばならん…」

「違わないよ」

マルも話に加わった。
「要するに貴方は、“過去を消すこと”が償いだって思い込んでるだけだよ。
そこの女王様はそんなこと無いんだけど…貴方は自分を責め過ぎ。
そして自分を大事にしてないんだね」
「ええ……本当の意味での“償い”はそうではありません。
過去を“消す”のではなく“受け入れ”、少しずつ己を正していくこと…そうですよね、オリバー……」
レイナスがオリバーの顔を見て言うと、彼もそれに応えた。
「そう…君が消えることなんてないんだ。
皆でアイツを止めて……焦らなくていいから、また進むんだよ」
「…………」
ジャボーは沈黙して各々の言葉を聞いている。
彼は静かな表情と裏腹に、脳内で目まぐるしく思考していた。
そんな彼へ、ジャイロが再び言う。
「小難しい話になっちまったが…アンタにはきっちり償ってもらう。
皆のために何が出来るか悩んで、考え苦しみ抜いてもらうのさ。
そうして、ちっせぇことから少しずつ取り組んでくんだ」
「…兄さんも盗みを止めたのは勿論、人々から盗んだ物を返していってますからね」
「えっ…そうだったの!?」
「ラ、ラース!余計なこと言うんじゃねーぞ!?」
笑顔のラースと驚くマルの言葉に焦るジャイロ。
「ごめんなさい…丁度良い例かと思いまして」
しかし、ラースは至って普通に返した。
「…ま、まあつまりっ!
そのっ…蘇ったからには…償うために死ぬ気で生きろ!!
死んで詫びるだなんて“逃げ”は許さねぇからな!」
取り乱しつつも締めくくるジャイロ。
「…“死ぬ気で生きろ”…って訳分からんわ……」
シズクが呆れて呟いた。

「…今度こそ君の傷を癒やすよ。
放って置けないんだ…僕も皆も」
再び“ヒールオール”のルーンを描くオリバー。
シズクが念入りにジャボーの右腕を掴み、動きを止めようとしたが…彼自身もう動くことはなかった。


「また…巻き込んでしまったな……」


一言ポツリと呟く。
しかし口調はどこか明るく、傷の癒える感覚もあってか表情は穏やかだ。

何かしらの決意を改めたらしい。



「ふふふ……あははは…」

傷が完治する頃だろうか…気味の悪い笑い声が聞こえた。
声の方を見ると案の定、影が動きを取り戻しつつある。
痺れが完全に取れないのか影は身を震わせ、触手は頭足類のように踊り狂っていた。

「いつからナシウスも女王陛下も…女子供に諭されるほど成り下がった……?」

ゆっくり顔を上げて影が言う。
笑顔に変わりはないが……苦痛も顔に映っていた。
「ナシウス…また他人に踊らされるつもりですか?
何も分かっていませんよ、そいつらは……。
心の弱い奴らと一緒にいたら…お前の心まで弱ってしまう」
ハッキリと、しかし囁くような口調でジャボーに語りかけた。
「傷付きたくなければこちらへ来なさい…私にその体を渡すんです。
痛みを感じぬ“閉じた心”こそ人間の行き着くべき所……そうでしょう?」
右手を差し伸べるように伸ばす影。

“悪魔の囁き”。

それはきっとこういうものだ、とオリバー達は感じる。
牙を隠し、甘い言葉で相手を引き込んでいく……闇そのものにさえ思えた。
そして彼らは大いに危惧する。
ジャボーが引き込まれてしまわないか、と。

「うぐあああぁっ!?」
しかしそれは必要なかった。

「何も分かっていないのは…お前だ」

ジャボーは顔を上げ、影を睨み付ける。
影の右腕を一本の氷の棘が貫通していた。
否…茨のようにそれは何本も生え、複雑に絡み合い影を地面に縫いつけている。
「ジャボー…!」
「…考え直して…くれたんだね」
オリバー達が感激したように笑みを浮かべた。
「しかし何だあの魔法!?
俺達と戦った時は使わなかったろ!?」
「ええ、見たこともない魔法です」
ジャイロとラースが氷の棘を見つめる。
「使えなかった……あの時は」
ジャボーが静かに答えた。
「てこたぁ…蘇った後に覚えたのか!?」
「…ああ」
「んなっ…」
ジャイロは、短期間でこれだけの魔法を覚えたことに驚き…その後、納得したように言う。
「…成る程、灰を利用しやがったのか」
聖灰より得た強大な魔力…それは本来危険なものだが、彼の場合その危険はなくなり今では彼本来の魔力と変わらぬように引き出すことが出来る。

「ナシっ…ウすうぅ……!!!」
影が呻きつつジャボーを睨み返した。
そんな影へジャボーが鋭い瞳を向ける。
「お前に私の心は見えない…自ら心を閉ざした者に人の心は見えぬ。
過去から逃げ回り、外界から心を隔離したお前には……何も無い 」
「ぁぐうぅっ!?」
言いつつ氷の棘を操り、更に伸ばして分岐させ…影の体を貫いた。
「…何も見えていなかったんだ……私の心には何も映っていなかった。
だが、ようやく………」
影の傷口からは赤い液が滴り、氷の棘を染めていく。
「自らに出来た闇を越え、その手で光を掴み取る……それを繰り返して進むのが“人間”だと気付いた」
最後に、彼は瞳に強い光を宿した。


「……この体はお前の器などではない。
己の心に従い、生きて償うと決めた。
私の体はそのためにある…!」

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            ~END~